第59話―エピローグ・決意の灯火はその心に
後日、僕達はサーリャ様の館に来ていた。皆庭に出て、酒を飲んだり、様々な料理に舌鼓を打ちながら楽しんでいる。つまるところ、パーティをしているわけだ。なぜこうなったのかというと、「最近色々ありすぎたよね、じゃあみんなで一件落着じゃないけど、取り敢えずお疲れ様会をしよう」と、なったというわけだ。
僕と姉さんはもちろん、カレン様にヴァン殿やラグナ殿、ディーレ殿、メロウ殿、ルオに父さんと母さん、魔剣のイズとルークまでも参加している。もちろん、ジャック殿も。
僕はスパークリングワインを片手に、少し離れてお祭り状態の皆を微笑ましく見ていた。
ふと、サーリャ様がその中にいないことに気づく。少し考え、僕は庭から離れ、館の裏庭へと回る。
「……やっぱり、ここへいましたか」
その言葉に振り向くサーリャ様。
「……ええ。ここに、お兄ちゃんがいるから」
そしてその眼を再度前に向ける。その目線の先には、彼女の兄、アリオスの使用していた魔剣、万変剣ムルティクリオスが突き立てられていた。
あの後、僕達は王城の訓練場を〚
「……一緒に、やりたかったわね……。一度も兄妹らしいことはできなかったから……」
「………そう、ですね……」
そう言って僕は、サーリャ様と同じように手を合わせ、黙禱をする。
すると突如、背中にドンっという衝撃が走る。
「!?」
「なあーに二人
「「へ、陛下!?」」
衝撃の正体は、なんとカレン様が肩を組んできたことによるものだった。
その顔は赤く上気しており、かなりの量のお酒を飲んだことが見て取れる。
「一体どれだけ飲んだのですか!ラグナ殿やイズたちは!?」
「ん-?みん
「ボクが渡したんだー」
そう言ってカレン様の隣に現れたのは、こちらも同じように顔を赤くしているジャック殿だ。
「ジャック殿までそんなに飲んで……」
「パーティなんだから細かいことは気にしなーい!ほーら、二人も一緒に楽しもっ!」
そう言って拳を振り上げ、僕とサーリャ様の腕をつかんで会場である庭へ連れていく。
「わわっ、ちょっと待ってくださいよー!」
「……元気なものね、ほんとに」
そう言ってサーリャ様は苦笑する。
庭に連れられると、その場はもはや混沌の様相を醸し出していた。姉さんだけでなく、母さんもかなり飲んでおり、その頬が上気している。父さんは……恐らくザルなのだろう、かなり飲んでいるようだがその頬は一切染まっていない。メロウ殿とヴァン殿は二人でワインの飲み比べをしており、ラグナ殿達は嗜む程度の量を少しずつ飲んでいる。カレン様達は既にその混沌の中に戻っており、さらに飲んでいる。
―全く、そんなに飲んだら明日大変ですよ……。
「……まあ、今日くらいは、いいですよね」
「ええ。そうね」
そう言って二人でその様子を見守り続ける。
一先ずは解決し、平和が訪れたが、まだ全て解決したわけではない。“境界”に突如形成された、グリエド様の結界。アリオス以外の、他の〝魔女狩り〟達の謎。そして……アリオスを殺めた、“聖界”の王。向こうで何が起こっているのか……。色々と問題は山積みだ。
だが―
「―今だけでも、この楽しい時間を精一杯過ごそう」
「おーいヴァイ!お前も入って来いよ!!」
「はーい!!行くから待っててくださいよ!ほら、サーリャ様も一緒に」
「……ええ、行きましょうか」
そして、大切な人を、これ以上傷つけられないように。失わないように。
―僕はもっと、強くなるんだ。
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