第28話―敵わない存在、超えるべき壁
「―それまで!」
そう言った途端、イズが“影遠”を解除したのか、彼女の速さが元に戻り、彼女の放った極致は、イズに受けられ虚しく消えていった。
「……今のは、一体?」
「私の極致の一つだ。“影遠”は、対象の時間を引き伸ばす。彼我の戦力差が大きければ大きいほど、その効果は大きくなる。即ち、私と貴殿の戦力差が、あの結果となって出たのだ」
「………これが、私と、イズ殿の、差」
そう呟く彼女の顔は、どこか嬉しそうだった。
「はは……っ、はははっ!見つけた、私の敵わない相手を!私の新たな目標を!!遂に、遂に見つけた!!」
恐らく、自身のできることをやってきて、極めた結果、周りで自身に敵う者がいなくなったのだろう。圧倒的な敗北を喫してもなお、彼女は今まで私が見てきた中で、1番いい顔で笑っていた。
その時、ディーレがこちらに歩いてくる。
「私は、ヴァイ殿、貴殿と手合わせ願いたい。もちろん、剣のみならず、〝魔女の末裔〟の力、存分に振るってもらって構わない。貴殿の本当の強さを見てみたいのです」
「私……ですか?」
これに私は少し驚いた。先程のラグナ殿と同じように、ルーク殿とするのかと思っていた。
だが、私もディーレ殿とも一度、やってみたいと思っていた。
「私でよければ、お願いします」
「決まりだな。では、立会人は私がやろう」
姉上がそう申し出る。
「では―両者、抜剣!」
「イズ、お願いします」
「承知」
そう言って、イズは魔剣に変身する。
対するディーレも、自身の魔剣を召喚する。
「耀け、朱雀。我が身に迫る災厄撥ね退け、天下泰平をもたらしたまえ!
召喚されたのは、柄から刀身まで朱く染まった打刀だ。こちらもラグナ殿の刀同様、軽く反りが入っていて、色こそ鮮やかなれど、華美な装飾は無く、美しい刀だ。
「良い刀ですね」
「ありがとうございます」
それだけ言うと、私たちは目の前に相対する互いに集中する。
そして、姉上が声を出す。
「始めッ!」
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