第22話―剣の頂、“極致奥義”
「「陽天剣、極致奥義・
そして繰り出されるは、奥義たる“極致”の、最高峰。
「「―“
瞬間、深淵に包まれているはずの“影牢”に、夕日のような優しい光が差した。だが、これはそんな優しいものではない。“黄昏時”とは、“逢魔が時”。魑魅魍魎が跋扈する
太陽神の極光が消え、再び深淵と静寂が戻る。
静寂の中、姉上が口を開く。
「………これは凄いな……」
「ええ……。正直僕も、ここまでとは思っていませんでした」
「…………」
そして絶句する私。
極致の最高峰とは、こんなにも並外れているのか。
初めて見た頂の絶技に、私は見惚れてしまっていた。
「さて、今度はお前の番だぞ、ヴァイよ」
そう姉上が言ってくる。
「え、ええ。……イズ、出来るか解りませんが、私達も」
「承知。我が主ならば必ず」
「ありがとう。では、行きますよ」
そうして私達も姉上達と同様に同じ構えをとる。
そして、私達も、“極致”の最高峰に挑む。
「「夜は深まり、月は上りて、火影集いし蜃気楼。
深淵がさらに深まり、訪れたのは、無数の火の影。それらは漂い、煌めき、私たちを覆う深淵を―かき消した。まるで、蜃気楼のように。
「………夜?一体何なの、これは……!?」
そう言っているのは、“影牢”の外で待っていたサーリャ様か。
何もなかったかのようにゆらりと揺らいで消えた後に残るのは、今し方放った“極致奥義”による深淵と、漂い続ける無数の煌めきのみ。それらは全てを消し尽くさんと、彷徨い続けている。
私たちが剣を振るうと、その全ての煌めきが、星屑のように塵となったあと、一切が影となって消えていった。
そして、視界に光が戻る。
「さすがだ、我が主」
そう言って、感情の乏しい表情に微笑を湛えるイズ。
私はそれに、今までで1番嬉しくなった。
「………これが、“極致”の、最高峰」
「ええ。成功したのだ、初めてにして。やはり、我が主を選んだ私の眼に狂いは無かった」
私だけでなく、サーリャ様や姉上、ルークさえも呆然としていた。
到達した。剣の、頂に。姉上と同じレベルに。
その事実に、私は思わずガッツポーズをしていた。
「ふふっ、久しぶりに見たな、お前がそこまで感情を出しているところを」
「あっ……これは……」
「いいぞ、たまにはそういう弟っぽいところも見たいからな」
「………」
私はそう姉上に言われ、恥ずかしさで黙ってしまった。
周りを見渡すと、サーリャ様のみならず、ルークも微笑んでいた。……いや、サーリャ様と姉上は微笑んでいるというよりはニヤニヤしている、の方が正しいか。
「もっと普段から甘えてくれてもいいんだぞ?」
「遠慮します」
私は被せ気味に即答する。
「イズ」
「解っている」
その瞬間何かを感じ取ったのか、2人は剣を構え―
「陽天剣、」「影淵剣、」
「「極致其の壱―」」
「―“
イズの漆黒の魔剣から伸びた影が何者かを閉じ込め、ルークの握る純白の魔剣に白焔を纏わせ、“影牢”ごと斬る―
「―相変わらず酷いなぁ。まだ何もしてないのに。君たちも『傲慢』じゃないかい?掻き消せ―〚
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