第21話―双子の魔剣

「じゃあ、始めるわよ。『叡智ノ王メーティス』―〚変体メタモルフォーゼ〛」


次の瞬間、翡翠色の光が剣を包む。剣の形が変形していき、徐々に人の形をかたどっていく。

そして数分も経たないうちに、完全な魔人体へと変身が完了した。


「―お初にお目にかかる、我が主」

「―お会いできて光栄です、ご主人様」


そうして跪いた状態で現れた双子の魔人。

私の前にいる、アビスレイジであろう魔人は黒髪に白のメッシュが入っており、漆黒の装束を身に纏っている。自身の剣と同じその漆黒の瞳は、全てを呑み込むほどに黒い。

そして姉上の前にいるソルクツァーレと思われるもう1人の魔人は、銀髪に黒のメッシュが入っており、純白の騎士服のようなもので身を固めている。金色に輝くその瞳は、見た人に勇気をもたらしてくれるような、それでいて安心感すら覚えるような眼をしている。


「これが……」

「そう。貴方達の剣。名前を与えてあげて?」


そう言われ、私と姉上は少し考える。

そして、2人で口を揃えて言う。


「貴方の名前は……イズです。これからもよろしくお願いしますね、イズ」

「お前の名前はルークだ!よろしくな!」

「は」「ええ、僕の方こそ」


私たちがそう言うと、イズと私の中で“何か”が一気に増した気がした

おそらく姉上もそうなのだろう、2人で顔を見合わせていると。


「うん、それぞれの“魂の繋がり”が強固になったわね。今の状態で試しに“極致”を放ってみたらどうかしら?」

「でしたらいいのがあります。……行けますか、イズ」

「承知」


イズはそう言うと、自分の分身たる影淵剣をもう一振り召喚する。


「では、行きますよ」

「いつでも」


そして、同時に放つ。


「「影淵剣えいえんけん、極致其の壱―“影牢かげろう”」」


地面に突き刺した二振りの漆黒の剣から、同様に漆黒の影が伸び、私たちを呑み込む。


「ほう。お前もついに“至った”のか。ヴァイよ、本当に顔合わせの時何があった?」

「ラグナ殿と手合わせをしたのです。その際に、“本質”を掴みまして」

「“至った”ばかりでこの練度か。相変わらず、そら恐ろしいほどの成長速度だな」


2人でそんな話をしている中、イズとルークはというと。


「君の主様、凄いね。“至った”ばかりでこの密度なんて。成長速度が尋常じゃないよ」

「ああ。私も驚きが隠せない」

「……大丈夫だよ、表情には出てないから。でも、普段感情を表に出さない君がそう言うんだから、相当なんだろうね」

「そなたの主人も感覚というところでは驚異的だと思うが。そなたを握ってすぐに“至った”と記憶しているが?」

「そうだね。正直あれには僕も驚いたよ。すぐに掴んじゃうんだから。お互い凄まじい主様を持ったものだね」

「違いない」


2人でそんな話をしていた。最初から見てくれてたのですか―と少し嬉しくなったのは、ここだけの話だ。


「さて、じゃあ、どっちから行く?」

「では、姉上からどうぞ。私はさっきので少し解りましたから」

「なら、遠慮なくいかせてもらうぞ。ルーク、やれるな?」

「もちろんです。いつでもどうぞ、ご主人様」


そう言った後、2人は同じ構えを取る。


「「陽天剣ようてんけん、極致奥義・倒景とうけい―」」


そして繰り出されるは、奥義たる“極致”の、最高峰。


「「―“天穹テンキュウ天照ノ黄昏アマテラスノタソガレ”ッッ!!」」

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