第2話―模擬戦

私と姉上は移動し、森の中の大きくひらけた場所に来た。


「……さて!今日は何をするんだ?」

「では……たまには剣術の方でもやりましょうか。魔力練成や魔法ばかりだと体が鈍ってしまいますし、近接戦に持ち込まれると厄介なので」


そう言って私は魔法陣から二振りの木刀を抜き、そのうちの一振りを姉上に渡した。


「ふむ、いいぞ。私もたまには身体を動かさないとな」


私たちは相対し、剣を構える。姉上の正眼の構えに対し、私は半身で構える。


「ルールの方は……魔法は身体強化以外使用禁止、でどうですか?」

「面白い、いいだろう。では―そろそろ始めようか」

「……ええ」


お互いの雰囲気が変わる。世界から色が無くなる。殺気が立ち上る。身体強化によって知覚速度が限界まで高められている中、木の葉がひらりと舞い、地面に触れた―刹那。

私たちはほぼ同時に動き始めた。

先ずは横なぎ。下に沈み避けられる。そこから姉上の斬り上げ。宙返りで後ろに下がりながら避ける。そこから突進しつつ右から袈裟懸けに斬り下ろし。受けられ、鍔迫り合いに移行する。


「楽しそうだな、ヴァイよ」

「そういう姉上もいい笑顔です」

「そうだな……木刀での模擬戦で、ここまで白熱する戦いは久方ぶりだ。実に心が躍るよ」

「そうですか。では、もっと楽しませて差し上げましょう!」

「むっ」


そう言って私は瞬時に腕の力を抜く。水崩スイホウ。相手の重心を利用し、体勢を崩す技だ。姉上に致命的な隙ができる。

―もらった!勝利を確信した私は、首筋を目掛けて袈裟がけに剣を振るう。その瞬間―

姉上の、魔力が、消えた。


「―ふむ、掴めたぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る