魔女の姉の身の回りの世話をしていたら、いつの間にか近衛騎士団長に抜擢されていました。

夜刀神 遼

第1話―プロローグ

この世界には隔絶された二つの次元がある。1つは人間界である聖界サザンクロシニアス連合王国。そしてもう1つは―魔族の住む、魔界ロゼルナ王国。これは、そのロゼルナ王国での、1人の物語。




「姉上、そろそろ起きてください!何時だと思ってるんですか!」

「むー……まだ寝かせろ……」

「そう言い出したらあなたキリがないのですから!寝るくらいなら私の魔法の鍛錬に付き合ってください!それと早く起きて着替えてください!洗濯ができないではないですか!“ウィンディア”!」


そう言って私は姉上、レイティアの布団を魔法で引き剥がす。


「あー!もっと寝たかったのに……」


―魔界ロゼルナ王国。ここは、聖界サザンクロシニアス連合王国、詰まるところ人間界と隔絶された次元にある世界。その昔、人間と魔族は和平を結んでいた。だが、そんな長らく続いていた平和を、破壊する者が現れた。その者たちは魔女狩りと呼ばれていた。その名の通り、魔女を見つけ次第捕まえ、火炙り、水責め……そのほかにも様々な拷問をし、幾度となく殺してきた。その度に我が先代国王、グリエド・リュ・ロゼルナ陛下は人間に忠告をされ、最終的にはその武威をもお見せになったにも関わらず、人間は、いや、一部の人間は聞く耳を持たなかった。見かねた陛下は、そのお力にて人間の国と次元を隔て、魔女狩り共から逃げおおせた、という歴史がある。そのため、魔女の末裔たる私たちには、少なくない因縁があるのだ。特に……我が姉上は。


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