第25話「そんなわけ、ないじゃないですかぁ……!」(※2回目)
『side:【協会】の【職員】 芦川淡々』
「いけいけ~♡ いいぞぉ~♡」
九頭竜村の地下深く、うけい神社の真下にある【協会】の研究室にて。
満智院最強子に九頭竜村の嘘を暴いてほしい芦川淡々は……そりゃもう完全に調子に乗っていた。
「L・O・V・E・満智院♡ がんばれがんばれ満智院♡」
アラサーメスガキのチアコスである。
いい歳こいてポンポンをフリフリさせながら踊り狂う姿は世が世なら気が狂ったと思われてもおかしくはないだろうが……残る二人も気持ち自体は分からなくもないので一旦同僚の痴態については見て見ぬふりをした。
『
その成功はあと一歩の所まで迫っている。
あとは満智院最強子が九頭竜村の嘘を暴くだけ。
オユランド淡島は九頭竜村中に張り巡らされた監視カメラの映像をモニター越しに見つめ苦い顔をし、ただでさえ不健康な顔を青ざめさせ、背筋に走った寒気に身体を震わせる。
「おれ、こんな化け物と戦わされてたのかよ……壁登りとかも人間離れしてっけど……そんなことよりも白銀真白のアレを見てもノータイムで適応してやがる……本当に人間かよ……【探索者】とかにスカウトしたほうがいいんじゃねぇの」
「ていうか真白さんのアレってぇ」
淡々はモニターを指さす。そこには自由自在に金平糖を出す白銀真白の姿。
「どう見ても『異なるもの』ですよねぇ」
「そうだよなぁ」
ふたりのため息が重なる。
「どうすっかなぁ……例のプランを上手く使えば『うけい様』と一緒に白銀真白を【都市伝説化】させることも不可能じゃないが……」
「でもそれってぇ、オユランドくんがまたあのお嬢様とやり合うって事でしょお? 大丈夫ですかぁ? わたしまた同僚のお葬式とか出たくないですよぉ……それともぉ……もしかして実はリベンジに燃えちゃったりしてますぅ? オユランドくん、少年漫画大好きですもんねぇ」
「バーカ、熱血主人公はフィクションだからいいんだよ。おれはもういい歳こいた大人だからそういう暑っ苦しいのはやらないの。未来なんて見えないんだから、賢い大人は今の安定を取るの」
オユランド淡島はモニターに映る若者二人から目を逸らすように、わざとらしくやれやれといったポーズを取る。
「ま、白銀真白の件は今考えても仕方ないでしょ。幸い金平糖を出すだけっぽいし会話も通じるわけだし、報告だけして【協会】のリアクションを待とうや」
「ですねぇ……」
二つ以上の『異なるもの』を同時に扱うのは下っ端【職員】の手に余る。オユランド淡島の言う通り、今は棚上げにするほかないだろうという合意が2人の間で形成されていく。
「ていうかぁ、」
そうこうしていると、淡々は司進太がひたすらにモニターを見つめ、そのハゲた頭を脂汗で光らせていることに気が付く。
「進太さん、そんなにモニターを見つめて……どうしちゃったんですかぁ?」
「いや……杞憂だったらいいんだけどね、ホラ」
と言って、司進太はモニターを指さす。
そこには、うけい神社まで逃げ込んできた白銀真白とそれを追い詰める満智院最強子が映し出されている。
「この研究所の真上まで来てるしさ、もしここがバレたら……結構まずいんじゃないかなって心配になってね」
「またまたぁ~♡ 心配しすぎですって進太さん♡ 確かにこの研究所は神社の真下にありますケドぉ……ここのセキュリティは万全ですしぃ、この上にあるうけい神社が吹き飛びでもしない限りは大丈夫ですよぉ♡」
「……」
「…………」
「? どうしたんですかぁ二人とも」
「い、いやぁ……」
「いやな、なんていうかこんな感じのやり取りを少し前にした気がしてな……」
「……いやいや、コメディ小説じゃないんですからぁ……そんな都合よく天丼ネタが発生するわけぇ」
「……」
「…………」
「………………」
「白銀さんが大量に金平糖を出し始めたね……」
「なぁ、《
「いやいや、まさかそんなわけ……」
「……」
「…………」
「………………」
その場にいた全員が嫌な汗をかいたその瞬間。
モニターの向こうから、
『粉塵爆発って、ご存知ですか?』
白銀真白のキメ台詞が発せられ。
全員が同時に顔を手で覆い、淡々は天井を仰ぎながら叫んだ。
「そんなわけ、ないじゃないですかぁ……!」
ちゅ、どおおおおおおんんんんん!!!
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