第24話手を出したい獲物

「抱きたい……」

 危険な森の中。

 同時に周りに人がいない空間。


 俺は鋼に防欲塗装を塗りまくった鉄壁の精神で耐えながら、イルマを抱きしめながら心からの言葉を呟く。


 本人に直接言ってしまう内容ではないが、良いのだ。

 今は抱けないけれどイルマが成人したら必ず抱くから。


 これはいわば予約を再確認しているだけなのだ。

 きっとそうなのだ。

 まさか、まだ未成熟のイルマに手を出そうとしているわけではない。

 断じてない!


 そんな俺の内心を知ってか、知らずかイルマは俺を抱きしめ返しながら上目遣いで問い返す。

「なんで抱かないの?」


 その言葉には11才には思えない色香があった。


 イルマはもうその意味がわからぬ子供ではないのだと実感させられた。

 その意味を理解して彼女は俺に問い返したのだ。


 それと同時に。

 どのような角度、視線の投げ方、究極で最強に魅惑的な上目遣いについてイルマに語ったことがあった。

 たしか3才頃。


 その教えを忘れることなく、イルマはそれを修練し昇華してみせていた。

 ナンテ、オソロシイ子!


「グゥウウウ!?」

 可愛さのクリティカルヒット。

 俺の超合金の精神はボロボロだ!


 イルマも11才……もうじき12才となる。

 俺の英才教育の甲斐があってか、随分と大人びてはきていた。


 それがここにきて俺を追い詰める!


 ……いやまあ、この世界の文化的に12才ぐらいなら結婚もあり得るから、大人になるのも早いんだろうなぁ。


 あと前世でもこの年の女の子は結構ませてるというか大人になるのも早い。

 男は子供のままだったりもするけど。


 よし、少し冷静になってきた。


 しかしそこで、俺の心の変化を読み取ったイルマは恐るべき行動に出た。


 イルマはわずかな距離を背伸びという技で詰め寄り、そして重なる唇。

「なっ……!?」


 先程よりもじっくりと重ねられたせいで、その禁忌の柔らかさが脳髄はもとより俺の若き身体全体を駆け巡る。


 さっきまで真っ赤になってもじもじしていたイルマがなんて進化だ!?


「……えへへ、クスハが動揺してる」

「ノゥおおおおおおおおおお!?」


 俺はロリコンじゃない、ロリコンじゃない!

 ノーマルだ!!


「……嫌だった?」

 悲しそうな顔をするイルマ。

 すぐに俺は立ち直る。


「そんなわけがない。いいかい、イルマ。帰ったらちょっと重大で大事な話がある。ここでは安心してイチャイチャ……じゃなくて! 安心して話ができない。わかるね?」

「うん、わかった。クスハ好きだよ」


「うん、俺も好きだよ。いいや、愛してるね! そこも含めてお話をしようではないか」

「うん」


 そこからの記憶はない。

 気づけば家の中で2人でいた。

 俺の家はワンルームで4人で暮らしている。

 この世界ではそんなものだ。


 恥の文化と言ってですね、いえいえ、それは前世のお話。


 混乱する頭を抱えつつ、俺はイルマと膝を付き合わせてオハナシをする。


「いいかい、イルマ君。若年層の性経験というのは実は若い女性の身体に大きな負担になるという説がある」

「そうなの?」


 なんか、そう聞いたことがある程度である。

 今更、調べることはできない。


 若年層での結婚は、寿命自体が短い世界では仕方ないことかもしれないが、それでも避けられた方が寿命が伸びる可能性は高い。


 それもあるが、そもそも俺はロリコンじゃないのよ。

 俺自身がイルマと一才しか違わないことはこの際置いておいて。


「そうなのだよ。体質や状況にもよるし、検証データもいくつかの説があって一概には言えないが、せめて成人まで待とうとする俺の意図はそこにある。イルマ君にはいつまでも若々しく、50になっても俺の夜の相手をしてもらわねばならない」


「おばあちゃんになっても私を抱く気なんだ……、クスハって凄いね……」


 50といえば、この世界では下手したらひ孫がいるかもしれない。


 12才で結婚して子供を早くに産めば、子供が結婚するときまだ20代。

 さらにその子供が若くで結婚して子供を産めばそうなる。


 30を超えると子供を産むことは難しい。

 そういう事情でロキシ村でも30を超えた女の人が手ほどき役を引き受けている。

 30未満のベネットが手ほどき役なのは例外なのだ。


 イルマはベネットの娘でさらに英才教育つきだ。

 問題なく手を出すと思う。


 わかってくれたかと安心した俺の心の隙をつくようにイルマが言葉をぶっ込む。

「じゃあキスは?」

「ん?」


 キスとは接吻のことであり、実は明治以前は接吻という言葉がなかったとかうろ覚えで当てにならない記憶が……。


「キスも良くないの?」

 そうやって現実回避をしようとする俺にイルマはさらに追い討ちをかける。

 効果はバツグンでゲキゲキだ!(混乱)


「キスは……どうだろう? ディープキスは刺激が強すぎて良くないとはいうけど、それも程度の問題な気はするからなぁ……」


 キスでそこまで病気になったりするかなぁ。

 歯周菌や虫歯が移る原因にはなるらしいが、これまた幼いときからの英才教育で俺とイルマは歯磨きをしっかりしている。

 なのでお互いの場合は危険はグッと減る。


 えっ、それなら良いのか?(大混乱)


「じゃあ、決まりだね。今度そのディープっていうのも教えてね。時々ならいいんでしょ?」


「えっ?」

 11才と?

 俺も12才だからおかしくはない、のか?


「決まり」

「あ、はい」


 決まったのですね、えっ、ナニが?(イルマに洗脳中)


「じゃ、早速」

「ムグッ!?」


 そこからチュッチュと繰り返されるリップ音がリアルに聞こえる。

 だってリアルだから。


 俺はケモノイルマに上からのしかかられて何度もキスをする羽目になったのだった。


 抵抗? なんのこと?

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