第17話浮気を見つかった旦那の気持ち

 イルマは可愛く頬を膨らませ俺の背中にしがみついてソランを威嚇する。


「じゃ、じゃあ、私はこれで……また誘ってね!」

 そう言ってソランは颯爽さっそうと逃げた。


 俺はヤツを見くびっていた。

 逃げどきを一切間違わなかった!


 残された俺と膨れっ面のイルマ。

 事態は緊急で早急だ!(意味不明)


 イルマは俺の背中にのし掛かり、最近お気に入りの肩口を甘噛みする。


 痛くないというか、妙にムズムズする。

 美少女とはいえ11才の子にイケナイ気持ちを抱きそうになる。


 俺もいまは12才なんだけど、それはそれ。

 精神的なナニか的にはベネットでさえ若く理想の女ぐらいだから、未成年に手を出すのは流石にちょっと……。


「お母さんが言ってた。クスハはなにも執着しないって。なにか求めてもそれは必要だからそうしているだけ。大切なモノさえ、あっという間にゴミに変わってしまえると」


 ……ベネットすげぇ。

 身体が交わったせいか色々とバレてるー。


 どうしてこうなったのか。

 言ってはなんだが、俺はイチャラブ純愛派である!


 そもそも人生を楽しむといっても、エロのことに全振りしたいわけではないのだ!

 それはむしろ必要最低限を求めていたはずで。


 待て、石を投げるな。


 もしもこれが1回目の世界であるならば、俺は未来の可能性を信じて初めからイルマだけを愛したことだろう。

 ベネットとは肉体関係は結んだかもしれないが。

 ベネットのあの色香は仕方がない。


 とにかく、イルマはメインヒロインである。

 それはつまりどういうことかといえば、主人公アサトの女である!


 俺が主人公アサトから寝取ろうとしているとも言えるし、ゲームでは主人公アサトが俺の幼馴染イルマを寝取るとも言えるのだ!

 俺はゲーム未登場だけど!


 ぶっちゃけ、寝取るのはいいけど寝取られるのは嫌いだし、寝取られる女も嫌いなんだよねーというどうしようもない性癖ゆえに致し方ないのだ。


 なお、この件に関してイルマはカケラも悪くない。

 ゲーム世界設定的にそうなだけで、イルマが裏切りをかましたわけではないのだから。


 まあ、だからイルマがいつか主人公アサトのメインヒロインに大事にするつもり。


 イルマはなおも言葉を続ける。

「私のことは執着してくれているけど、ただ1度でもそれを手離せば終わる」


 すげー。

 バレてますがな。

 ベネットおそるべし(2回目)。


 そりゃまあ、イルマはゲームヒロインで主人公の女だし、俺モブだし。

 言っちゃあなんだが、人の女に性欲以外での興味ないし(クズ)。


「クスハが欲しいなら脇目も振らずに繋ぎ止めておきなさいって。だから私はクスハに全部を捧げたい」


 俺はなにを聞かされているのだろう。

 11才の子に愛の告白を受けてます。

 犯罪です。


 いえ、この世界では問題ではないし、なんなら農村部では結婚して子供を産むこともあったり、俺も今は12才ですが。


 それでもなに聞かされているんだろう!?


 俺が動揺しているのを肩口の甘噛みから読み取ったのか、イルマはなおも言葉を続ける。


「今は信用してくれなくてもいい。成人したらクスハの女にしてくれると約束してるから」


 イルマ育成計画と称して、幼い頃から言い聞かせてましたね〜。


 俺はあくまでゲーム開始時の美人イルマを、性欲的に好きにすることぐらいしか考えてませんが!?


 この世界の11才って早熟!?

 それとも俺が知らなかっただけで前世でも結構、女の子は早熟だった?


 考えてみれば、前世でも男ってガキよねぇと女子が言っていたけど、アレはそういう意味もあったのだろうか。

 俺にはもう知ることはできないし、今更知りたくない!


「お母さんにもクスハを堕とすテクニック教えてくれるらしいから頑張るね?」


 それは正直に言って良いことだったのでしょうか?

 ベネットは俺とのことをどこまで話しているのでしょうか?


 それと俺を堕とすテクニックとはナニをする気なのでしょうか、怖いんですけど?


 言っておきますが、イルマが俺のモノになりつつベネット並のテクニックを兼ね備えたら、俺はどっぷりとハマる自信が会ってしまいますわよ?


 そして主人公アサトの登場と寝取られで脳破壊の未来ですか?


「クスハがそういうことしたいなら私はいつでもいいよ?」

「お子様のお身体はノーセンキューです」

「……うん、じゃあお子様の身体じゃなくなるまで待つね」


 おかしいーなー、ゲームのイルマはこんな健気な美少女じゃないぞ?

 覚悟ガンギマリの武士っぽいポニーテールだったはずなんだけど、別人だったかな?


「人生は1度きりだから、私は未来永劫クスハだけをずっと好き」


 俺は薄く微笑む。


 ……ああ、イルマ違うんだよ。

 人生は1度などではない。

 それは俺という存在が証明してしまった。


 君は何度でも生まれ変わり、別の誰かと恋に堕ち、また俺ではない別の誰かと結ばれる。


 一生とか永遠とか、そんなものにはなにも価値がないことが証明されてしまった。


 次に人生が幸せであるかどうかすらも保証はないし、過去の不幸さえも大した意味はない。


「私はこの生命全てでクスハにそれを証明するから」


 あ、今の顔はゲームのときと同じ覚悟ガンギマリの顔だ。

 それより随分幼いが、それでも絶対に曲げない意思を感じる。


 ポンポンとイルマの背中をあやしながら、それでも俺は思う。


 でもまあ、そう言ってても一過性のもんだろうし、どうせいずれはゲームのヒロインとモブの関係になるんだろう。


 だから。


 どうやって身体だけもて遊んで逃げようかなぁ〜、と。

 クズな俺に引っ掛かったことを運がなかったと諦めてくれ。

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