第13話イルマはクスハと結婚する

 ベネットとそんな会話をしつつも、まず生きていくことが大事な世知辛いゲーム世界。


 ゲーム世界ってもっと緩くない?


 ブレイク物語自体はもっともっと緩めの世界に感じたが、滅びる世界なんだからそりゃ緩いわけないか……。


 冒険者ギルドが12才から登録できることは、その年から冒険者としての仕事が問題なくできることを意味しない。


 当たり前のことだが、経験不足の子供など社会の荒波の中では美味しいカモでしかない。


 骨までしゃぶられて、それでも生き残ったほんの一握りがわずかに未来に希望を繋げられるのだ。


 そういう世界だ、チートをよこせ。


 まず俺が最初にやったことは2つ。

 王都にある冒険者ギルドを周り、ギルド員の反応や性質を確認すること。


 もう1つは学校に通うことだ。

 12才から冒険者登録ができるということは、12才まで通えることのできる学校は、冒険者ギルドと直接繋がりがなくとも情報の宝庫である。


 冒険者は危険が多い職業だ。

 それに対して学校と連携しての社会見学などは行っていない。


 本編ゲーム世界は主人公が成人15歳から始まるせいか、単純に社会福祉の未整備か、その辺りは行き渡っていない。


 それでも学校という場所からの繋がりは信用という意味で大きい。

 そんなわけで俺も学校に行ける限りは行くことに決めた。


 知らなければならないこの世界のことや鍛えることや人との繋がりなど。

 得意とか不得意とかいってられる贅沢はない。


 コミュニケーションは得意な方ではなかったが、村での冒険譚(?)を面白おかしく語ったり大人の感覚を駆使して、12才児たちの中で一目置かれるようになった。

 1年ぐらいならボロは出ない、はず。


 反対に教職員には質問攻め。

 俺の一方的で偏ったイメージかもしれないが擁護教員の先生って、なんであんなに可愛いんだろう?


 顔で選んでない?

 気のせい?

 当然、そこにはひっきりなしに通った。


 ハルカさんというらしい。

 可愛らしい20代ぐらい。

 肉体関係を持ちたいがエロゲーでもないので、仲良くなってもそんな機会は訪れない。


 俺にエロチートを!!!(心の叫び)


 そう思うとベネットとの関係は実にありがたい。

 ……いや、本当に若い身体の性的衝動リピドーってヤバいのよ。


 ベッドのことは教えてもらえないが、とりあえず手当の仕方や薬草のことを教わった。


 ベッドのことは卒業時の思い出作りをワンチャン狙っている。

 そのあとはズルズルと……。


 薬草は関係はギルドでも依頼が出ていたりするので、必死に色や形に匂いと薬効を覚える。


 他にも冒険者ギルドに信用できる人はいるかや、冒険者になった卒業生のこと、王都の決まりごとなどなど。


 覚えること多すぎで覚えられん!

 転生してからの方が勉強しないといけないとか理不尽だ。

 鑑定よこせ!(切実)


 一部、子供が聞くような内容ではないことも尋ねて首を傾げられたが、弟たちがいることと生活を支えねばならないことを説明するとすぐに納得された。


 12才の子供が家族を支えないと生きていけない。

 そんなことはざらにある世界なのだ。


 反抗期もあってか、ここ最近は一緒に登校することのなかったイルマに背中に乗っかられて肩口を噛みつかれている。


 もっともイルマに涙目で肩に噛み付かれてもたいして痛くない。


「イルマはクスハと結婚するの……」

「そうだね」

 それは子供がパパと結婚する〜と言うようなものか。


 そう思いながら頭を撫でてやったら安心したのか、今度は肩口を吸い付いて離さなくなった。


「お母さんにクスハに面倒だと思われたら捨てられるよって言われた、捨てられるのヤダ……」

「はいはい、捨てないよ〜」


 バレてたら〜。

 ベネットには眼をジーッと見ただけで見破られたかー。


 でも捨てるのは俺の方ではなく君の方だからね、メインヒロインちゃん。


 学校に近づくにつれ、イルマは離れないことを主張するように甘えてくる。


 その光景を見た生徒たちから阿鼻叫喚の声が響く。

 この数ヶ月でイルマは一気に学校の有名人になっていた。


 メインヒロインというキャバシティの高さはもとより、幼い頃よりの俺の英才教育にて王都でも滅多にいない美少女となったイルマ。


 多くの少年少女の初恋泥棒と化していた。


 俺たちが通える学校は平民オンリー。

 貴族が混じっていたりしたら、かなりややこしいことになっていただろう。


 時間の問題かな!

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