第11話ベネットとの一戦

 さてここからは王都での生活である。


 王都では一般民も学校に行く。

 12才までということで俺は1年だけ、イルマは2年間通える。

 当然、金がかかる。


 優秀な子はさらに高等部に進学もするが、全体の10パーセント程度であり大半が教育をすでに受けている貴族ばかりだ。


 超優秀な平民の子も進学できるが、まあ、大体は貴族の付き人になるだけだ。

 それでも平民には得難い優良な就職先だ。


 まあ、それはともかく俺も12歳。

 成人年齢は15歳だが、冒険者として登録できるのは12才からで色々と大人の作法を理解する必要がある。


 なのでベネットに筆おろしを頼んだ。


 これにはさらに深い考えがある。

 やがては俺も大人の流儀として夜の街に繰り出す必要があるかもしれない。


 例外ではあるが、栄養が足りていた俺は同年代の子よりも身体もそれに伴う精力も強い。


 しかしながら、王都であろうとも夜の街には性病などの様々な危険が潜んでいる。

 転生前であってもそれらは切っても切れない関係にあったが、転生前は医療技術や薬剤が進んでいた。

 果たして魔法でそれがどこまで治療できるのかは不透明である。


 イルマ?

 11才よ?

 子供の性行為は後々、身体の不調の原因になるという学説が……よく知らないが。


 まあ、俺が子供は対象外なせいでもある。

 子供は守るものよ、せめて成人(15才)までは。


 それでも俺の欲望が限界突破したときは保証できない。

 俺は俺というニンゲンをある意味で信用している。


 やらかすときはやらかすと!


 ゆえに、その危険を回避するため、お金を払いつつ是非ベネットに頼みたいと思っている。


 そうすることでベネット一家は生活費も稼げて、俺もスッキリできるという無敵の循環が行われるのだ。


 しかし、その俺の計画は最初の段階で壁にぶち当たる。


 ベネットが拒否を示したのだ。

 一言でいうと「未来の息子の性欲処理をしちゃうのは問題があるのよ」と。


 同じ家庭内でその関係になってしまうと、息子の子供を産んでしまう可能性もあるのでよろしくないのだそうだ。


 そう言われても、イルマはメインヒロインの1人なので俺の嫁にはならないから問題はないんだが、その事実は未来にしかわからない。


 なお、問題なのは義理の息子になる点だけで、旦那に悪いとか浮気がどうのという問題は一切ない。


 初めてに限って、将来に関わることだから作法が色々とあるらしい。

 本来なら村長や家長が采配することではあるらしい。


 乱交してるだけと思ったけどなぁ。

 乱交文化の基準ってわからねぇ〜。


 俺は懇々と説いた。

 俺の熱き想いと熱情を。


 一言でまとめると、ベネットとヤリたいとしか言ってないけれど。

 トドメになったのは他に相手がいないという事実だ。


 そして結局……堕ちた。


 村長も家長だった父も亡くなり、そもそも村で血筋や経験的に問題のない相手がベネット以外にいないから致し方なく……という口実に落ち着いた。


 村の風習に身体が慣れてしまっていたベネットは欲求不満であった。

 時間の指定を含むタイミングはベネットが示してくれた。


 イルマは学校に行っている昼間。

 ベネットも旦那は王都で慣れない仕事につけず出稼ぎに出て留守。


 さすがはベネット、手慣れている。


「まさかクーちゃんの筆下ろしをすることになるとはねぇ〜」

 困ったようにニコニコしながら、服を脱いでいく姿はたまらなく興奮した。


 すっげぇ気持ち良かった。


 ベネットとはその後、これを口実に隙を見て何度も交わった……というか、互いに都合の良い相手が他にいなかった。


 俺は俺で身体も大きくなり、ベネット相手に前世からの欲望を我慢をするにも限界だった。


 歳を取るとともに理性と性欲のバランスが取れるようになるが、若いうちは身体の欲によって本気で正気を無くす。


 若い身体の欲望を舐めてはいけない。

 前世の感覚があるので、余計にその衝動に抗えないのだ。


 王都では乱交文化どころか、その逆の貞操感が主流でありもしもベネットほどの美人が、村でのような幾人もの男を相手にしようものなら、一瞬で噂になり家庭崩壊で王都にも住めなくなる。


 それでいえば母も同じなのだが、こちらは稼ぎ手の旦那がいないので逆にどうとでも言い訳が立つのだ。


 ベネットも俺も信用出来て秘密を守り、仮にバレても村での風習を継承しただけと言い訳が立つ相手が互いだけだった。


 罪深き村のあり様は地図からその存在が消えても罪深かった。


 性欲について解消の目処がたったことでホッとした。


 わりとどうしようもないほどに脳が性欲に支配されて失敗でもすれば、この世界では本気で死活問題になる。


 俺もベネットもはっきりとは口にしないが、どうもベネットの旦那でイルマの父は女で失敗をやらかしている気配がするのだ。


 おそらく王都内で手を出してはいけない相手に手を出して、王都にいると命の危険があるから外に出稼ぎに出たのだろう。

 村の因習の被害はなにも女だけの話ではない。


 生き残った村の男たちも俺も、その因習の世界で生きて来たのだ。

 それに染まっていないのは、まだそれに関わっていなかった子供と俺に目隠しされたイルマぐらいなもの。


 俺は前世からの、ベネットも経験から、ベネットの旦那がこのまま雲隠れする可能性を考えている。


 イルマだけでなく、その妹クレアもいる。

 生活に余裕はない。


 それもあって持ちつ持たれつではあるが、俺はベネットと身体の関係を結ぶことでイルマ家を支援する口実を得たのであった。


 ゲーム世界のくせして、エロ一つとってもどこか世知辛いのはなぜだ。

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