第8話村はまた一つ平和になった
俺は10歳になった。
3年前、過酷な戦いを乗り越えて生き残った俺は更なる魔法の真髄を学ぶべく、魔導書を求めた。
そして真なる父である村長の手腕で無事に手に入れることができた。
持つべきものは権力者の父である。
なお、一緒に暮らしている父のことではない。
これで体感レベル4ぐらいにはなれるはずだ。
まだホブゴブリンには勝てぬ……。
10才では当然である。
10才で魔物を粉砕できるやつはニンゲン辞めてやがる
あれから、イルマには妹ができて、出稼ぎから帰って来たイルマ父は『いない間にできた可愛い娘』という現実には気づかず、目が蕩けるほどに喜んでいた。
この村、闇が深ぇえ……。
俺はいつかこの村を焼き尽くすことを固く心に誓った。
無論、俺がこの村の夜のロマンを満喫してからの話である。
俺は魔法を鍛え、同時に少しずつだが剣も鍛えていった。
そして、ついに俺は必殺の剣技、
そう、俺はあの恐ろしい病にかかってしまったのだ!
クソダサい必殺技を編み出し、それを格好良いと思ってしまうあの病である。
かつての前世なる遠い記憶でもこの病にかかってしまったが、今回もかかってしまった!
自覚があるだけに今回の方が酷い。
だって仕方ないじゃないか、この世界には魔法があるんだから!!
さてそんな俺だが、最強化計画は順調とはいえない。
この村は裕福ではあるが、それは餓死しない程度。
当たり前のことだが、腹一杯に飯が食えるほど裕福な村など、すでに村ではない。
そういう場所は貴族の保養地だったり、そのまま成長して街になったりする。
とにかく俺は最強になるために1番に行わないといけないことがあった。
それは食うことだ。
なので、俺はゴブリン退治の依頼に立ち寄った冒険者にせがみ、狩りの仕方と餞別に弓をもらった。
代わりに俺の家の3件隣の若奥様が欲求不満であることを教えてあげた。
その家も旦那は炭鉱に出稼ぎに出ている。
冒険者たちは俺からの報酬を受け取り、次の日、親指をあげて満足げに頷き俺に狩りを教えてくれた。
3日後、その家の旦那が帰って来てしまい、裸で寝ていたところを村人から袋叩きに遭っていたが、俺は子供だからナニがあったかなど知らない。
狩りを教えてくれた冒険者は、技術だけは優秀だったので、俺はなんとか2日に1度はウサギや鳥、それにイノシシなどを罠で狩ることが出来るようになり、イルマと2人で腹一杯食えるようになった。
イルマには俺プロデュース美少女化計画が着々と進行していた。
なお、イルマは俺の後を常に付いてくるため、卓越したスニーキング能力を得て、小動物なら俺より上手に狩ることが出来るようになっていた。
解せぬ。
腹一杯食える狩猟生活だが、すぐに暗礁に乗り上げることになった。
村人たちにバレたのだ。
森の中で美味しそうな肉の匂いがすると村長宅に通報が入り、調査したところ森の中で肉を食う俺たちの姿が見つかった。
繰り返すが、村は餓死はしないが満腹にはならない。
つまり、みんな飢えているのだ。
しかし村人の腹を満たすだけの肉が取れることはない。それに俺たちも肉が食いたい、誰よりも食いたい。
交渉の結果、1か月に1度イノシシを納品することであとは自由と決まった。
10歳のガキにイノシシを狩れと命令する大人はかなり横暴だと思う。
代わりにではないが、イルマと2人は畑仕事は免除となった。
村というのは、子供でも大事な労働力だ。
10歳にもなれば畑仕事を1日中手伝わされるので、魔法や剣の練習に勉学に励む余裕は与えられなくなるのだ。
結果的にはこれで良かったのかもしれない。
あくせく働いて、飢え続ける毎日よりもガッといってガッと喰らう、そんな生き方を。
そんな生活を1年ほど続けると、10歳にしてイルマはなかなかの美少女になってしまった。
村娘は栄養が行き届かない。
ゆえにどうしても裕福な貴族の方が遥かに綺麗になっていく。
イルマは生まれながらの素質は元より、俺の英才教育と野人生活で栄養が行き届き、村ではちょっとお目にかかれない美少女への道を突き進んでいたのだ。
必然的に不埒な男に狙われた。
隣の家のタゴロク45歳だ。
ヤツは血走った目でイルマを見つめており、近いうちに夜這いをかけて、俺が夢見るベネットとイルマの
隣の美女ママを美味しく頂いただけでは飽きたらなかったのか、なんたる罪!
万死に値する!!!
なので、成敗しておいた。
森にイルマが居るからと誘い出し、俺の
「あがが……」
上から土で埋めて証拠隠滅しようかと思ったが、
その後、木から逆さに吊るしあげ、バケツに水を入れてそこに頭から何度も突っ込んだ。
そして不埒な考えが起こらなくなるまで、1日……2日、3日と説得(?)したらタゴロクも人が変わったように大人しくなった。
こうして、村はまた一つ平和になった。
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