第12話
「リーゼ!」
「わわっ、ルナさん。お久しぶりですね」
教会の廊下を歩いて数分、待ち合わせの場所で既にリーゼが待ってくれていた。私の心は高鳴り、気づけば彼女に向かって飛びかかっていた。
「ルナさん、教会の廊下ではあまり走らないでくださいね?危ないですから」
「えへへ、ごめんごめん。リーゼがいたから、つい…」
「ふふっ。私が担当なんですから、私がいるのは当たり前ですよ?」
彼女に飛びついたまま、私は自然と抱きついてしまう。すると、リーゼは優しく私の頭を撫でてくれる。その手のひらは温かくて、心までほぐれる感じがする。リーゼの穏やかな笑顔を見ると、少し照れくさそうな表情をしていた。
「あの、ルナさん。そろそろ仕事を始めませんか?」
「んー?あと少し〜」
「ふふっ。仕事しない人には、もう撫で撫ではしてあげませんよ」
「ええっ、そんなぁ!わかったよぉ、ちゃんと仕事するから!」
私は仕方なくリーゼの腕から離れ、気持ちを切り替えた。確か教会内の清掃を依頼されているんだった。
「掃除道具はこの魔導水掃器と魔導吸引器を使います。水掃器は水の魔石を、吸引器は風の魔石をはめ込むことでゴミや埃を取り除いてくれる便利な掃除用魔導具です」
「わぁ、これ初めて見た!こんなのがあるんだ~。」
リーゼから魔導具を受け取ると、私はそれをじっくり観察した。初めて見るものに、ついつい興味が湧いてしまう。リーゼはそんな私を見て、くすくすと笑っている。
「もう、なんで笑うの?」
「ふふふっ、ルナさんでも知らないことがあるんだなって思って。」
「なにそれ、私だって知らないことくらいあるよ?」
例えば…そう、リーゼのスリーサイズとか。私も一応、女の子だし?リーゼの体型にはちょっと興味がある。でも、そんな生々しいことを彼女に聞いたら、嫌われちゃうかもしれない。聞いてみたかったが必死に口を噤んだ。
「例えば、なんですか?」
「あはは、なんでもないよ。それより、そろそろ仕事に取り掛かろうか。リーゼ」
「そ、そうですね。じゃあ、始めましょうか」
私たちは、教会の廊下を二人で掃除し始めた。魔導水掃器を使って床を拭いていき、その後魔導吸引器の力で埃を吸い取っていく。リーゼと一緒に作業をしていると不思議と時間があっという間に過ぎていく気がした。
*
「ふぅ、やっと終わったぁ」
「終わりましたね。いつもはこの清掃、半日くらいかかるんですけど、ルナさんのおかげでかなり短縮できました」
「えへへ、私って万能だから☆」
作業が終わった頃、ちょうどお昼の鐘が鳴り始めた。リーゼは少し照れくさそうに笑っていた。
「そろそろお昼ですね。ルナさん、お腹すきませんか?私、お腹が空いてしまいました…。」
「うん、私もお腹ペコペコ。ねえ、早く掃除用魔導具を戻して食堂に行こうよ。何か美味しいもの食べに行こっ、リーゼ!」
私はリーゼの手を取って、彼女を急かすように笑うとリーゼも私の勢いに少し驚いたようだが、すぐに微笑んで頷く。
「ふふ、ルナさんって本当に元気いっぱいですね。じゃあ、さっそく魔導具を片付けに行きましょうか。」
二人で協力して掃除用魔導具を元の場所に戻すと、私たちは急いで食堂へと向かうのだった。
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