第11話
「えいさほいさ、えいさほいさっ!」
その後は特にサボることもなく、街民から返却された本たちを元の位置に戻していった。本のタイトルを見て気になるものもいくつかあったが、それは仕事の後にゆっくり楽しもうと割り切って、黙々と作業を進めた。
「ルナさん、ありがとうございます。これで一通り終わりましたよ」
「いえいえ! 私のお母さんも書庫の管理をしていて、その手伝いをしていたこともあったので、すごく懐かしかったです」
「そうなんですね。ルナさんは本が好きなんですね」
「はい! それはもう、特に御伽話系が大好きで!」
「そ、そうなんですか」
「『パーティを追放された魔法使い、最強の道を目指す』とか『月夜見×八犬伝』、『マジック・アンド・サーヴァス』とか、すごく面白いですよね!」
「あは、あはは…私、その本は初めて知りました」
「そうなんですか。お母さん曰く、どこにでもある娯楽本らしいから、きっとどこかで巡り会えると思いますよ!」
私は司書さんが少し困惑している理由にも気づかずに、好きな本のタイトルを次々と挙げた。しかし、司書さんはどれも知らない様子だった。本好きなら、こういう娯楽本の御伽話も読んでおかないと、時代に置いて行かれるよと、私はアドバイスをしてあげた。司書さんは苦笑いをしながらも私のおすすめの本をメモしていた。
「その本たちを仕入れることができるか、上に問い合わせてみますね」
「ありがとうございます! 多分、街の人たちも読んだらきっとハマると思います!それじゃあ、次の依頼もあるので失礼しますね」
私は書庫の扉を開けて廊下へ飛び出した。次の依頼の担当者はリーゼだ。リーゼとふたりきりになるのは、多分数週間ぶりだ。数日前のハロウィンの時は子供たちもいたし…。私のリーゼ。えへへっ、会うのが楽しみだなあ。
「はあ、どれもタイトルの長い作品ばかりですね…。えっと、『お世話になっております。仕入れたい本のリストをお送りします。お忙しいとは思いますが、よろしくお願い申し上げます。』と」
一方、司書さんは受付でくつろぎながら、通信魔法でメッセージを打ち込んでいた。
「あのルナって子、あんなに若いのに、よくもまあ色々な本を読んでいるわね。私の知らないことも知っていたし、あの子のお母さんの書庫ってどんな所なのかしら…」
これは余談だが、その数日後、星教会本部から司書さん宛てに返事が届いた。そのメッセージの内容は『そんな本は我々でも把握していない。本当にそんな本が存在するのか?』というものだった。司書さんは酷く落胆したそうだが、それを当の本人であるルナは知る由もなかった。
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