第9話

「リーゼは今、何をしてるんだろう。今日会えたら良いな」


 ハロウィン当日、ルナは街の賑やかな雰囲気に包まれながら、一人で散策していた。街全体が飾り付けられ、子供たちの楽しげな声が響いている。私は手に持ったパンプキンプリンと紅茶を味わいながら、その特別な雰囲気を楽しんでいた。


「うん、美味しい…」


 私は一口ずつ味わいながら、幸せな気持ちに浸っていた。賑わっている街の様子を眺めていると教会の子供たちが自分たちより少し大きめのカゴを持ちながらお店に入っていくのが見えた。お化けの仮装をするものや御伽話に出てくるような悪魔を模した衣装を着る子供たちの中に、一番後ろで楽しそうに微笑んでいるリーゼの姿を見つけた。


「リーゼ!」


 私の心臓が急に跳ねる。リーゼが教会の子供たちと一緒にいるとわかると、急いでプリンを食べ終わらせて、お店に向かって歩き出した。


「急がなきゃ!」


 店に到着すると、私はドアを開けて中に入った。店内には、ハロウィンの飾り付けとお菓子の甘い香りが広がっていた。子供たちは楽しそうにお菓子をもらい、リーゼもその中で一緒に微笑んでいた。


「リーゼ、こんにちは!」


 店内に入ると、私はリーゼを見つけて呼びかけた。リーゼは驚いたように振り向き、すぐににっこりと笑顔を見せた。


「ルナさん、偶然ですね」

「うん、偶然!それで、何をしているの?」


「ハロウィンの恒例行事です。お菓子をもらうイベントなんですよ。『Trick or Treat』って言って、大人たちからお菓子をいただくんです」

「それ、私もやりたい!着いていってもいい?」

「みなさん、お姉さんが着いて来たいそうですよ」

「お姉さん、一緒に行こう!」

「あ、あははっ。うん、一緒に!」


 私たちは子供たちに手を引かれ、一緒にお店のスタッフに向かい楽しく『Trick or Treat』と声をかけた。スタッフがにこやかにお菓子を手渡してくれると、私は嬉しそうにそのお菓子を受け取るのだった。


「わあ、たくさんのお菓子!おばさん、ありがとうございます!」

「いえいえ。子供たちの天真爛漫さに私たち大人は元気をもらっているんだもの、このくらいはしてあげなきゃね?」

「ありがとうございます。また買いにきますから」

「そうしてくれるとありがたいわ。またリーゼちゃんの顔見たいしねえ」



「ばいばいおばさん!また来ます!」

「はいはい、ルナちゃん頑張ってね」


 子供たちと共にお店を出た後、私はすぐにリーゼにお礼を言った。


「リーゼ!私、こんなこと初めて!だから、ありがとう!」

「どういたしまして。今日は一緒に楽しみましょうね」

「うん、そうする!」


 そうして子供たちと一緒に他のお店にもお菓子を貰いにいった。みんなと共に過ごす時間はとても楽しくリーゼと一緒にハロウィンの特別な雰囲気を楽しんだ。リーゼが子供たちと一緒にいる姿が、私にはとても心温まる光景に映った。けれど私は思ってしまった。『なんだか子供たちと一緒にいるリーゼを見てると、もやもやするな』と。この私の知らない感情は一体なんなのだろうか。

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