第8話
「ごめんください!」
私はリーゼへのお土産を宿屋の私の部屋に一旦置いた後、商業ギルドの建物に足を踏み入れた。中は広々としていて、活気に満ちた空気が漂っていた。受付カウンターに近づくと、笑顔の担当者が迎えてくれた。
「こんにちは、こちらの商業ギルドで配達の依頼を受けたルナです。これ、依頼書と冒険者カードです」
担当者は、穏やかな笑顔を浮かべながら冒険者カードを見た。
「ああ、ルナさんですね。どうも、担当のアルベルトです。よろしくお願いします。かなり人手が足りてないんですよ、こちらが本日の配達リストです。」
そう言って、アルベルトさんから一枚の紙を受け取った。リストには、街の各店への配達物とその場所が詳細に記されていた。私はそれを見て、どの店がどのアイテムを受け取るかを確認した。アルベルトさんは配達の手順と注意点について説明を始めた。
「それでは、まずはこのリストに従って各店を回ってください。配達物にはそれぞれの店の名前と番号が記載されていますので、間違えないようにしてください。特に納品書と一緒に配達物を渡す必要がありますので、忘れずに確認してくださいね。」
私は頷きながら、メモを取りつつ説明を聞いた。アルベルトさんは更に特に注意すべきポイントや、急ぎの配達があれば優先してほしい旨を伝えてくれた。
「わかりました。ありがとうございます。これで配達を始めますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。もし途中で何か問題があれば、すぐに商業ギルドに連絡してください。」
私はアルベルトさんに礼を言ってから、配達リストを手に商業ギルドを出た。少し日が傾き始めている、少し急いだほうがいいかなと早足になる。配達の途中で立ち寄った店の店主たちも、ハロウィンの準備で忙しそうにしていた。
「ありがとう、これでハロウィンの準備が整うよ!」
最初の店で配達物を渡すと、店主がニコニコしながら言ってくれた。その言葉に、私はほっとした気持ちになりながら次の店へと向かった。各店を回るたびに、街の活気と人々の温かさを感じながら作業を進めた。商品の配達が終わり、リストの全てのチェックが完了すると、私は心の中で達成感を感じた。
「これで今日の任務も終わりかな」
私は小さく微笑みながら、商業ギルドに戻る準備を整えた。今度は、ハロウィンの飾り付けを手伝うために、アリゼさんのもとに向かうのだった。
*
「ただいま戻りました!」
私は商業ギルドでの配達を終え、再び冒険者協会に戻ってきた。協会の内部はすでに賑やかな雰囲気に包まれていた。ハロウィンの飾り付けの準備が整っており、色とりどりの装飾品やお菓子があちこちに並べられていた。
「おかえりなさい、ルナさん!お疲れ様でした。」
アリゼさんはにっこりと笑いながら迎えてくれた。
「お疲れ様です!配達は無事に終わりましたよ。」
「それは良かった。次は飾り付けの手伝いをお願いしたいんです」
アリゼさんは周りを指さして、飾り付けの進行状況を説明した。
「はい、了解しました!」
「一応紹介しておくわね。私の妹のアリナよ」
「初めまして、アリナです。私の姉がいつもお世話になってます」
「いえいえ、お世話になってるのは私の方ですよ!」
アリナさんはアリゼさんと似た優しい笑顔を持っており、彼女もまた、仕事の指揮をとる立場にあるようだった。アリナさんから手を差し伸ばされ、私は明るい声で挨拶をしその手を握り返した。
「それでは、アリゼさんと一緒に飾り付けの指示を出しますので、指示に従って作業を進めてくださいね。」
「はい、分かりました。」
アリゼさんとアリナさんの指揮の下、私は飾り付けの手伝いを始めた。壁にハロウィンのガーランドを掛けたり、テーブルにカラフルなキャンディーやお菓子を並べたりする作業を行う。協会のスタッフや他の冒険者もおり、それぞれの場所で忙しく働いており街全体がハロウィンの準備で溢れていた。
「ルナさん、ここをこうしておいてください。」
アリゼさんの指示のもと、私はその通りに装飾物を飾っていく。
「この位置にハロウィンのカボチャの飾りを置いてみてくださいね。」
「はい、わかりました!今行きます」
作業を進めるうちに、協会の内部はどんどん華やかになっていった。私は飾り付けをしながら、アリゼさんとアリナさんの指導のもと、作業をしていった。協会のスタッフたちとともに協力し合い、楽しい雰囲気の中で飾り付けを終えたときには、達成感と共に満足感が広がった。
「みんな、お疲れ様でした!」
アリゼさんが声をかけると、スタッフたちも一斉に頷いた。
「ルナさんも、本当にありがとう。おかげで素敵なハロウィンイベントが迎えられそうです。」
「いえ、こちらこそ楽しかったです!」
飾り付けを手伝うことで、協会の人々と一体感を感じ、充実した時間を過ごすことができた。その後、飾り付けが完了した協会を見渡しながら、ルナは心から満足感を感じていた。ハロウィンイベントに向けた準備が整い、一息をつくのだった。
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