第7話
「今日の依頼はなぁにかな〜」
私は街を散策していた。初めてスキルカードを手にしてから、数日が経っていた。街はお祭りムードでどこか不思議な感覚だった。今まで森の中でしか過ごしたことがなかった私にとって、こんなに賑やかな季節の行事なんて初めての体験だから。偶然通りかかった人に声をかけてみることにした。
「すみません。これ、どういう祭りなんですか?」
「ああ。これはね、ハロウィンっていうお祭りなんだ。死者があの世から帰ってきて共にパーティをする、とても良いイベントだろう?」
「そうですね、とても良いイベントです」
男の人と別れた後、私はお店に飾られている装飾品や商品をを眺めてはお母さんの書庫に似たような本があったかを思い出す。でもそれは本の中のお話、私にとっては生で見るのは初めてのことだった。
「ハロウィン…私、こんなお祭り初めてかも」
目に映るものすべてが新鮮だった。店頭には、かわいらしいカボチャやおばけの飾りが並んでいて、子供たちが仮装を楽しんでいる姿があちこちで見られる。
「リーゼが一緒だったら、もっと楽しかったのに…」
いつもそばにいてくれるリーゼの存在が、今日は少し恋しい。彼女がいるだけで、私はなんだか安心できる。リーゼの笑顔を思い浮かべると、無意識に足が早くなっていた。何か彼女にお土産を買っていこうかな、そう思った。
「うん、そうしよう!」
リーゼが喜ぶ顔を想像するだけで、胸が高鳴る。近くにあるお店に入り、商品を眺めることにした。すると可愛らしいクッキーが目に入った。
「可愛い…。このクッキー、リーゼ喜んでくれるかな?」
「この商品、うちのハロウィン限定の商品なんですよ。どうです?お友達も喜ぶと思います」
「えへへっ、そうですか?じゃあこれお願いします」
私は慎重に選んだ一袋のクッキーを手に取り、店を出るのだった。ルティナの街はとても賑やかで、色とりどりの秋の花や美しい紅葉が街並みに彩りを添えている。その中で、私は心が少しだけ軽くなっていくのを感じた。袋を抱え、冒険者協会へと歩み始めた。今日のお土産を見せたら、きっと喜んでくれるに違いない。そんなことを考えながら、私はるんるんとした足取りで協会の扉を押すこだった。
「おはようございます、アリゼさん!今日の依頼をお願いします!」
「あ、ルナさん!今日も来てくれたんですね、今日はこの二つが残ってますよ」
アリゼさんは優しく微笑んで、今日の依頼を教えてくれた。ポーチに入ったお土産袋をお守り代わりにしながらリーゼの笑顔を思い浮かべ、今日も頑張ろうと心に誓った。私自身の為に、そしてリーゼの為に。
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