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 昼食が終わると、次は教員紹介の時間だった。直也と笹梅は午前中にいた中講義室に戻り三組の席に着いた。


 鐘が鳴ると共に三十人前後の教員らしき人達がぞろぞろと入って来た。その中には柳田校長、教頭、兎留場、キリウ、笠間もいた。


 教員達の服装はまちまちで、標準服の者、ジャージ姿の者、完全にくつろいだ私服姿の者、そして御犬の様に自分の属する流派の戦闘服を身にまとっている者もいる。

 加えて三分の一ぐらいの割合で武器を身に着けていた。


 因みに、柳田校長とキリウは似た様な袴姿で、校長はフルガ刀を下げているがキリウは何も持っていない。

 兎留場は属する流派の服なのかどこかの民族衣装なのか昨日と同じゆったりとした重そうな服を着ている。

 笠間はくつろいだ私服で、十何年も前に流行った様なしわくちゃで裾が長い薄紫色のシャツと、よれよれのズボンといった格好だ。


「えーそれでは教員紹介を始めます」

 兎留場が教壇に立ち言った。

「まず、皆さんご存知かと思いますが、こちら校長の柳田先生です」

 兎留場がそう言い腕を校長の方に向けると、校長は真っ白な山羊髭を捻り軽く頭を下げた。


 兎留場は次に教頭、次にその隣の教師と教員の並んだ順に順番に紹介をしていった。


「そのお隣が御犬先生です。御犬先生、お願いします」


 御犬は眠そうな声で自己紹介を始めた。

「御犬共樹。Ⅰ種仲裁師。はっきり言って部活か専門で忍術採る人以外関わりにならないと思うよ。忍術でも四年から始まる『上級忍術』を教えてます。よろしくね」

 御犬は気の抜ける様な声で言った。


「次は君嶋先生、お願いします」


「君嶋妙子、Ⅰ種仲裁師です。部活で『魔術』を採る人、三年以上で『魔術』を専門にする人をお世話しちゃうわよん」

 単術試験の時にいた小柄な女性が手を振り「よろしくねっ!」と、猫の様な大きな目をさらに見開きさっぱり言った。


 直也を突っつき自分の方を向かせると、笹梅がこっそり言った。

「直也。キミドリ、君嶋先生っていうみたいだな」


「へー。やっぱりそーなんだ」

 この情報も姉ちゃんから聞いたんだろうなと思いつつ、直也は笹梅の仲養学校関係の詳しさに感心していた。


「次は遊馬ゆめ先生お願いします」



「遊馬一夜です。Ⅰ種仲裁師。一年から参加可能な『特殊能力制御』を教えています。よろしく」

 遊馬は見る者によって色々採れる様な口だけの曖昧な笑みを浮かべて言った。


 何人かの教師をさらに紹介し、兎留場は残り三人、一年の担任の紹介を始めた。


「では一年三組の担任、笠間先生お願いします」


笠間采奇さいき。Ⅱ種仲裁師。一年には『基本戦術』を教える。よろしく」笠間はだるそうに簡潔に言った。


「次は一年二組の担任、真納まのう先生お願いします」


「真納キリウ、Ⅲ種仲裁師です。一年での科目『護身術』担当です。よろしく」


「えー最後にわたくし、一年一組担任、兎留場うるば泰地たいちと申します。Ⅱ種仲裁師で学部では『基本術概論』、専攻科では『心術研究』を教えています。よろしくお願いします」


 その場にいる教員全員の自己紹介が終わると、二十分間の休憩となった。

 その後同じ場所で部活紹介があるのだ。


 休憩後部活紹介が始まり、仲裁に関係あるものから文芸部、料理部など仲裁にまったく関係無い様な部まで、合わせて三十を超える部活の紹介が終わると、直也は今日一日話しを聞いているだけだったのにすっかり草臥れてしまった。

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