第10話
凜が大学のゼミに参加し始めてから数週間が経過した。彼女は研究室での日々に深く没頭していたが、徐々にその高度な数学の世界に圧倒され始めていた。ゼミのメンバーたちは皆、凜の知らない複雑な理論や抽象的な概念について熱心に議論しており、彼女はその難解さに驚愕していた。
ある晩、凜はゼミの後にカフェで繭と待ち合わせた。繭は凜の様子に気づき、彼女が抱える悩みを見て取った。
「凜、最近ちょっと元気がないようだけど、どうしたの?」繭は心配そうに尋ねた。
凜はため息をつきながら、「実は…大学のゼミでの数学の話が本当に難しくて、ついていけない気がしているんだ。」と話し始めた。「みんなが話していることがわからないし、自分がここにいるのが場違いな気がして…」
繭は優しく微笑みながら、「それは誰にでもあることだよ。新しい環境や難しい問題に直面するのは、学びの一部だから。凜はとても才能があるから、心配しなくても大丈夫だよ。」と励ました。
「でも、みんなと比べて自分が未熟に思えるんだ。」凜は不安な表情で続けた。「自信がなくなってしまって…」
繭は凜の手を優しく握り、「凜、どんなに才能があっても、誰もが最初から全てを知っているわけじゃないよ。みんなも初めてはあったし、失敗や悩みも経験しているんだよ。大事なのは、あきらめずに続けることだよ。」と語りかけた。
凜はその言葉に少し救われた気がした。「ありがとう、繭。あなたの言葉で少し元気が出たよ。これからも頑張ってみる。」
「もちろん!私も応援してるから、一緒に頑張ろうね。」繭は温かい笑顔で答えた。
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