しゃぼん玉は思い出の中で

釣ール

かなわないことばかり

 噴水広場ふんすいひろばで今日もギターをひき鳴らす。



 たまたまここは路上ライブが禁止されておらず、近年の日本ではめずらしく夢を見る人間の行動をゆるしてくれている。



 もともと水をあやつることができる達哉たつやはギリギリ差別さべつされない程度に水を使って遊んだりアートを作って小遣こづかいい稼ぎをしていたがあきてきたので音楽活動をしている。




 それにここは彼女とよく来ていた場所でもあった。




 10代だとなんとなく一緒にいるだけで愛というこっぱずかしい感情をいだきながら過ごしていても何も不安はなかったが20代を過ぎる頃だともうそういった青臭あおくさい理由だけで長続きしなくなっていく。




 それでも金だけでなんとかなる生活を自分は作ってこなかったので彼女とは自然消滅しぜんしょうめつ



 現実はいつも残酷ざんこくだ。

 たしかに綺麗事ではどうにもならない。

 人生をやり直すことはできる。




 でもみんな違ってみんないいといいながらだからこそみんな大変で似たグループで集まって幸せだのなんだの言いたい放題。



 水をあやつる自分に共感してくれたのも喜んでくれたのも彼女だけで、音楽をやっていても暮らしていけそうだったのに未来への不安で恋は終わった。



 金と現実だけがすべてとは言わせないように今日もつたない曲を作って噴水の音に負けないよう、き語り続ける。



 むなしいなんてわかっていてもどうしても続けたいんだ。

 仕事の合間の時もあれば、職を探す時にギターを持つ時もある。



 音楽に救われた水使いは音楽で世の中に伝えたい。



 せめて自分の人生が誰よりも輝いていると。



 そうすることで彼女のことを忘れた。

 それがたがいのためだと信じながら。



 だから未来と戦える。

 でもあらがい疲れた。



 そんな時も語るのさ。

 この音楽で。



 子供がしゃぼん玉をふいていた。

 油の色はいつも人から嫌われるのに、いま周りをつつむしゃぼん玉の形と虹色の玉だけは愛らしく思える。



 あったなあ。

 そんなころも。



 だったらここにいる子供たちのためにうるさくなく、むずかしくない曲を作ろう。



 ここでの記憶がもしかしたら今ここで音楽やっている達哉のとる選択だと信じたいから。

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しゃぼん玉は思い出の中で 釣ール @pixixy1O

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