第7話 AM6:00~

:◆SE 早朝。緑多めの公園の環境音。雀の鳴き声など


:◆ベンチに座って、早朝の光景を見つめる二人



「あー、あんたのおごりでお腹もいっぱいになったし、涼しくて天気はいいし、このまま寝ちゃいそ~」※だらしない感じの声


「ホントに寝るようなことしないってば~」


「ここで寝たら、また帰った時に寝れなくなっちゃうし」


「ま、朝に寝ちゃうリズムで生活リズムグチャッちゃうけどさ」


「この公園、初めて来たんだけど」


「この時間でも結構人いるんだなって。散歩してるおじいさんとか」


「ちっちゃい犬連れてる女の人とか。あれ、たぶん夜職の人じゃないかな。服は地味でも、メイクそのままだったし。きっとこれから寝るんだろうね」


「うちらと同じよ」


「……うーん、あたしは夜の仕事したことないけど、友達がね」


「一度誘われたことはあるんだけど、ほら、あたしってこういう性格でしょ? ほぼ初対面の男の人と楽しく会話するなんて絶対無理だから」


「揉め事になるのは目に見えてるから、断っちゃったよ」


「でも、あんた一人おもてなしするくらいならできるかも」


「……あたしが何の気兼ねもなく接することができるのって、結局あんただけみたいだし」


「ああー。ごめん! また甘えすぎた」


「調子乗りウザいって話よね」


「えっ?」


「ちょっと」



:◆和紗の側に寄って、座り直すリスナー



「なによ」


「せっかくぴったり寄ってくれるなら、肩くらい抱いて」



:◆SE 和紗の肩に腕を伸ばす衣擦れの音


:◆声 肩を抱き寄せられたことで、和紗の声がリスナーの側に寄る



「ふふ。わがまま聞いてくれて、ありがと」


「やば。思ったより安心する……」


「寝ちゃいそう……」


「わかってるわよ。部屋まで我慢するから」



:◆声 主人公の耳元で囁き声:開始



「今、さ」


「ランニングしてる高校生くらいの子が通ったでしょ?」


「きっと、登校前に自主練してるちゃんとした子なんだろうね」


「朝っぱらから走れる若さと活力が羨ましいわ……」


「んー。あたしも陸上部だったけどさ」


「もうあの時ほど運動することもないしね」


「ジムも途中でやめちゃったし。忙しくて」


「大学の時? ああ、サークルくらいなら入ってたけど、運動系の部活とかサークルに入ってガチでやるってことはなかったかな」


「ふつーの大学生活だったよ」


「えー、そんなことまで聞く?」


「まあ、女子大じゃなかったから。サークルにしろゼミにしろ、男子はいたし、それなりにお誘いも付き合いもあったよ」


「でも、何度かデートするだけで終わり」


「そっから先は何もなかったよね」


「私、そんな見るからに地雷臭出してるかな?」


「そういえば、デートの途中であたし的に許せないことがあって、それで何度か揉めたかも……」


「相手はごめんごめんって謝ってたけどさ……あの時点で完全に見切られてたんだわ」


「うー、めんどくさい女って自覚はあるってばー」


「……でもさ、一人で生きていけるからいいやって言い切れるほど、踏ん切りはつけられなかったんだよね」


「あたしはいつもの調子で、こっちの方が正しいよねって思って口に出しちゃうんだけど、仕事の時とはまた違うんだよ。プライベートの時は」


「心のどこかで、無茶言っても受け止めてくれたらいいなとか考えてる」


「……やっぱり、めんどくさいか」



:◆声 ため息



「まあ、あたしなんてのはそんなもんなんスよ」


「……なんか、嬉しそうじゃない?」


「あたしに、ちゃんと付き合った恋人がいないのがそんなに嬉しい?」


「……ふーん、あんたもそうなんだ?」


「……じゃあ、ちゃんとデートしたのは、今んトコあたしが最後ってこと?」※小声で嬉しそうに


「ふふ」



:◆声 赤ちゃんをあやすような態度で。囁きながら:開始



「はいはい、よしよし。大変だったわね~」


「仕事が忙しくて恋人つくるヒマもなかった?」


「そうなんだぁ」


「でも、あんた大学行ったんでしょ~。その時に恋人つくるヒマもチャンスもあったんだから、言い訳よねー」


「かわいそかわいそ」


「でも、そういうカッコ悪いところも含めて、あんたのいいところ」



:◆声 赤ちゃんをあやすような態度で。囁きながら:停止



「……いつか絶対、あんたのことわかってくれる人が現れるから」



:◆声 ん~っ、と伸びをする和紗



「久しぶりに、こんなのんびりした休日過ごしたわ」


「……今日だけっていうのが、マジで残念かも」※自分に言い聞かせるように

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