第2話 禁断
私立
品位、人格を形成することを主眼とし、成績優秀な生徒にも厳しく接している。
服装、振る舞い、言葉遣い、全て、一流の社会人として、この日本を守らせる事を最終目標としている。
入試は学科、面接、過去の学歴と成績に拠って合否が決まる。
試験日の態度、服装の乱れは、即刻退場となる事が行き過ぎだとする家族からのクレームも、国指定の学校である事から届く事も無く処理される。
學圓の卒業生の何人かは、総理大臣経験者だ。
「御早う御座います。」
ユカリは何時もの様に私に挨拶をした。
私は、彼女の表情、髪、服装の乱れ、挨拶の姿勢をチェックしながら感心する。
「何時もながら、完璧な振舞いだ。」
そんな彼女に私は禁断の恋をしてしまった。
教師と生徒の恋。
年の差は7歳。
社会で言えば当たり前にある恋が立場によって引き裂かれる。
其れは、人権無視とも言えると私自身は感じていた。
ユカリの家庭環境は恵まれていた。
国会議員の両親に官僚の兄、私設秘書の姉。
そして、何れ高い地位に着くであろう末っ子のユカリ。
彼女の良さは、その身分にそぐわない素朴さにあった。
私は英語教諭で、ユカリは常に英語の成績はトップで居続けた。
「将来は外務省で働きたい。」
と言っていた。
私は、そんな彼女に周囲以上の扱いをした。
完全な下心からだ。
夜とは無しに英語授業の質問を受け付け、彼女もそれに答えてくれた。
「英語のメールで質問するように。」
私のパソコンのメールボックスはアルファベットの暗号だった。
”I did it when you should translate a book into English in a teacher , an English exercise as you said . The title is transformation of Kafka.”
「カフカの変身か。記憶が遠いなぁ、読み返そう。」
彼女の英文は
「先生、英語の練習に本を英訳すると良いとおっしゃいましたのでやってみました。タイトルはカフカの変身です。」
とあり、作品の一部を抜粋して英訳されていた。
スペル違い、英語の用い方どれをとっても、教師である私の実力と遜色なかった。
最早、個人授業など必要がないと英文末を読み切ろうとした時、心がすっぽりと力を抜かした。
”To the teacher of my first love, I like you. I want to associate. ”
「・・・」
そして、私達は禁断の恋に落ちた。
私達は、最初の頃は周囲に気を付ける為に、学校では、素知らぬ顔で通す事にしていた。
朝の挨拶時、授業中、廊下で擦れ違っても気心を隠した。
そして、放課後、帰宅する迄、二人の我慢は続いた。
ユカリは其れが出来る学生だった。
帰宅すると遠く離れた二人が同時にパソコンを開いていた。
運命の赤糸に操られるように。
”Teacher, we are like the person who committed a crime. You hide it in the neighborhood, and creep .it is feeling that becomes a clown though it is not to laugh. Is liking it wrong?”
「そんなことはないよ。好きでいる事が罪な訳がないよ。」
”Are you hard? I do not want that you do not want to let you suffer as for me and to do it. Will there be two people this time?”
私は禁断の果実を少し噛じる気になった。
彼女は喜びを顕にした。
”Really true! Glad. When I met, I love it, and a teacher loves one cup!”
彼女のはしゃぎ様が目に浮かび離れなかった。
私はユカリと逢う場所を探した。
ネットでカップルに最適な場所と打ち込み検索する。
その中でも穴場とあった公園を選んだ。
其処はデートには不釣り合いの墓地公園だった。
動画配信で観た「小さな恋のメロディ」に出てくるような外国人墓地だ。
其処には沢山の十字架が並び一つ一つが色を変え大きさも異なる。
墓石に書かれた英語名が二人を惹き付ける。
「先生、私もエンディングはこの場所にしたい。先生は、こうして私に十字を切るのよ。」
そう言ってキリスト教の祈りの仕草を真似た。
「何言ってる、生意気に。どうやっても僕が先に逝くに決まってるだろう。」
と二人でじゃれ合った。
そう、あの時は必然的にそうであると互いが信じて疑わなかった。
あの日が来る迄は…。
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