第十九死 教国
「目新しい傷がないと…?」
「はい…」
「そんなおかしな話がどこに…この人が私たちのために戦ってくれていたのをあなたも観ていたはず―」
「それは分かっています。ですが私の魔法に一切の反応がないのです。」
2人はおかしいといった顔をしながら僕の傷について話をする。
だけどそうしている間に僕の体は全快だ。手当てするところなんてどこにもない。
…そういえばこれについて話すの忘れてた…
「それなら回復魔法を使ったとかじゃないんですか?」
たまたま近くでその様子を見ていた若い護衛の人がそんなことを言う。だけどそれはありえないと傷を見てくれた人が否定をした。
「教国というのは知っていますね。」
いや…知りません。
ちらりと横を見ると僕以外の2人はさも当たり前に頷いている。
え?知らないの僕だけですか?
まあ異世界に来てからずっと森の中にいたしね。この世界についてほんと、何も知らないからな。しょうがない。
だけどある程度予想はできる。恐らくこの教国というものは神に仕える聖職者たちがいる国のことだろう。
それが今この話の中で話題に上がるということは…
「回復魔法…もとい聖魔法は教国の中でも限られた者にしか使えないとされている魔法です。」
「え?でもベルさんは使ってるじゃないですか。」
若い護衛の人が驚きながらも、ベルと呼ばれた護衛の人に同じく僕が気になっていたことを聞く。
「いやいや、私のは正確に言えば診察魔法といって相手の容態を診ることしかできない魔法ですよ。」
「それでも、十分すごいことですよ。」
従者の人がベルさん本人にも言い聞かせるように僕たちに説明をする。
「それに教国で生まれた人は全員金色の髪であり、そこに例外はありません。この少年の髪の色は白髪なので使うことはありえないのです。…まあ教国に生まれなくても金色の髪を持つ人なら、多少なりと使えることがあるそうですが。」
「へぇー」
「おい、カシャ!」
「うわッ!」
後ろから突然声が聞こえてくる。その声を聞いて驚いた若い護衛の人は、座っていた場所から転げ落ちる。
「ぼ、ボルさん…!」
「そんなところで何をサボってるんだ。ほら俺たちは仕事があるんだからサボってないで体を動かせ!…すみません、うちのバカがどうも…」
「大丈夫ですよ。」
表情は変わらず分かりにくいながらも、従者の人のその声色はとても優しく、それを聞いた隊長と呼ばれる男の表情も少し柔らかくなったような気がした。
「おう!そこの少年、俺たちを助けてくれてありがとうな。この恩は絶対に忘れない。俺の名前はボルペリオ、なんか困ったことがあったら俺を頼ってくれ。」
「い、いや…そんな…」
「それじゃあ失礼します。ほら!行くぞ!」
「ちょッ痛いですってボルさん!引きずんないでくださいよ!?」
ボルペリオと名乗ったその男は真の返事を聞く前に若い護衛の男を引きずって仕事へと戻っていった。
「……」
この人達って、魔法とかそういう知識が豊富そうなんだよね。さっきあんなに詳しく説明してくれたし。見た目からしてもかなりの身分の人に仕えてる人達だよな。
…この人達なら知ってるかも。
「あの…」
僕はここに来た目的である不死を殺す方法…ひいては、それができる人がいないのかどうかを聞こうと2人に声を掛ける…のだが
「…ッ!危ない!!」
「グギッ!!」
突然従者の人が僕に向かって叫ぶ。
…油断した。生きているゴブリンがまだいたのか。
「グギギ!!」
ゴブリンの手にはどこで拾ったのか、剣が握られている。剣は既に僕の目の前にまで迫ってきていた。
……取り敢えず喰らうか。これは避けられない、それなら喰らったところを捕まえて反撃すればいい。
そう思い、迫りくるゴブリンに対し特に何をするでもなく身を任せていた。
だけど次の瞬間には目の前で急にゴブリンが爆発四散した。
え?なんで?
答えは簡単。
「物語くん!!」
声の聞こえた方向に振り返ると息を荒げた状態で僕の方へ走ってくる人物…そう、小栖立さんがいた。
◆
【小栖立 奈々】
性別・女
好きな食べ物・キャラメル、シチュー
クラス・委員長
スキル・≪聖女≫
・自身の全ステータスが常に2倍。
・補助系の魔法の練度上昇。
・自身に降りかかる呪いなど闇属性のあらゆる攻撃に耐性を持つ。
備考
腰まで伸ばした艷やかな黒髪で、物語 真に接する時の性格からは考えられないくらいにキリッと整った美しい顔立ちをしている、俗に言う美少女。スタイルも抜群で、日本に居た頃は物凄いモテていたそう。尚、本人は物凄い男嫌い。
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