第十五死 森からの脱出④
『『ステータス?』』
『え?知らなかったんですか…?』
時間は遡り、葛葉の案内で真達がまだ出口へと向かっている道中でのことだった。異世界…そこに来てしまったことにより真達には特殊な能力が与えられてると葛葉から教わっていた。
『私はてっきり既に知っているとばかり思ってました。ほら、あのときクラスメイトの内の一人がそのことに気づいてそこからみんなで…』
『僕、1抜けです。』
『私も2抜け。』
『そうでした…』
手を上げながら飄々とした態度で言う2人に対して葛葉が(まじかこいつら…)と心のなかで小さくこぼす。
『コホン!まあともかく、物凄い力が与えられてるんですよ!!ちょっとステータスって言ってみてください!!』
『『―ステータス―』』
疑うような目で見ながらもステータスと唱える。その瞬間目の前に画面のようなものが映し出された。
『これは…』
真が思わず言葉を失っていると、葛葉が真の隣に来る。
それをドロっとした目つきで小栖立が見ていたのは言うまでもないだろう。
『どうです?すごいでしょう!!』
自信満々にドヤ顔をする葛葉。
『なんで葛葉さんが誇らしげにするん―』
『あ!ちなみに私のスキルはこれです!』
見ると葛葉の手が光り輝いている。そしてしばらく待つとその手には手榴弾が握られていた。
『おぉ!すごいですね!それどういう能力なんですか?』
『チッチッチッ!違いますよご主人!ス・キ・ル…です!』
再びドヤ顔を決めながら指を横にふる葛葉。
『スキル?』
『そうです。言い方は能力じゃなくてスキルです!もちろん私が名付け―』
『…漫画とかでよくある言い方ですよね。』
『……』
『?』
2人の会話が理解できなかったのか、小栖立は頭にハテナを浮かべる。
『そ、それでですね。私のスキルは【ギャンブル】と言うらしくて、1日に3回ランダムに何かが出てくるスキルです!今使ってるテントもそれで出たものなんですよ。』
気を取り直して説明をする葛葉だったが、その説明を聞いたあと、真が葛葉に歩み寄り、手に持っている手榴弾をくれないかと聞いた。
『これですか?いや〜これに見合う価値のものと交換じゃないとあげられ……ッますね!!はい!!』
『?』
真は気づいていなかったが、その言葉を言う直前、葛葉は気づいた…物凄い形相で睨んでくる1人の少女《こりすだち》に…
結局それに怖気づき…平たく言えば小栖立にビビって真にただで手榴弾を渡す葛葉。
『そ、それで委員長のスキルは何だったんですか…?』
『私?私は…』
雰囲気を変えるため葛葉は慌てて小栖立のスキルを聞く。
『なんだろう…これ、聖…女…?』
・・・・
―現在―
「アタシノテガハジカレタ?!…ソレニドウシテアタシノスキルガ…!」
「……」
おかしくなっていた小栖立さんは僕の目の前に立っている。その後ろ姿は先程までの小栖立ちさんとは違い、どうやら敵のスキルの効果が解けたみたいだった。
「アリエナイワ!?」
あの化け物が驚くのも無理はない。これはいわば小栖立さんや僕を含む一部の人にしか許されないだろうチートを使ったのだから。
小栖立さんのスキル【聖女】…その効果は自身の全ステータスが常に2倍になるのと補助系の魔法の練度上昇、そして最後が自身に降りかかる呪いなど闇属性のあらゆる攻撃に耐性を持つ、という効果だ。
小栖立さんは普段漫画とかゲームをしないのか、よくわかっていない様子だったけど僕はそれを聞いた瞬間、(あれ…それ強くない?)と顔には出なかったが驚いていた。
そして全ステータスの2倍化…あの時は疑問に思わなかったけど狼…仏殺を蹴り飛ばせたのもこれのおかげだと思う。
「ナゼアタシノスキルガ―」
「ねぇ…貴方が傷つけたの?」
化け物が何かを言おうとするときに小栖立が言葉を遮る。
「ナ、ナニヲイッテ!」
「貴方が傷つけたの…?」
何あれ怖…なんで同じことしか言わないの、化け物も混乱してるって…
「物語くんを傷つけるやつは誰であろうと…」
「ヒッ?!ク、クルナッ!!」
化け物がその巨体で辺り一帯を薙ぎ払う。だが小栖立はそれを軽々と避けると化け物に蹴りを一発叩き込んだ。
「ユルサナイ」
その後も一発…二発…三発と小栖立さんは化け物の顔へと蹴りを入れ続ける。
「ナ、ナンナンダキサマラハ!!?ソロイモソロッテ…ナゼアタシノスキルガキカナイ!!」
小栖立さんが蹴りを止め、化け物から離れる。化け物の方はかなりボコボコではあるが、まだ体力自体は残っていそうだ。
「さあ?体質とかじゃない?」
小栖立さんはそう言いながらゆっくりと化け物へと歩み寄る。
「これで、おわ―」
そうして拳を高く振り上げとどめを刺そうとした
その時
「え―」
小栖立さんが突然膝から崩れ落ちる。
「何が…」
体もこころなしか透けてってるような…
「ッ!物語くんッ―」
その言葉を最後に小栖立さんは突如として消えた。
「これは…」
恐らく…
「クク…ナゼカワカランガ、メザワリナヤツハキエタ!オマエヲマモルヤツハモウイナイゾ!!」
化け物は勝ち誇った笑みを浮かべながら堂々とこちらに近づいてくる。
「……」
「オトナシクアタイニクワレロ。」
一つ…
「……」
「オイ!キイテイルノ―」
「一つだけ気になっていることがあったんです。」
「ハ?」
近くに寄ってきていた化け物の体にゆっくりと張り付く。それを化け物は驚きの目で見ていた。『なんだ!?あたしに食われに来たのか』…と
だが実際にはそれは違う。
真の手には何かが握られていた。
そしてそれは既視感のある形をしていて…
「サッキアタシニナゲツケタバクダン?!」
「貴方が死んだらこの空間から出られるんですよね…?」
「ッ!?マ、マテ!―」
「待ちません。」
ピンを引き抜き辺りが吹き飛ぶ。それと同時に僕の意識も薄れていくのだった。
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