第八死 ヤバい人

小栖立さんと森を彷徨い続けて早3か月。依然として僕達は森の中を彷徨っていた。


え?どんだけ彷徨ってるんだって?正直僕も出たいよこんな森。


だけど…


「ねえねえ、物語くん。夕飯何食べたい?木の実?魚?それともお肉?」

「いや…僕は―」

「分かった。お肉ね!」


なんでこんな元気なんだこの子は。


「お腹すいたね。」


すると小栖立さんのお腹が小さく鳴った。


「くぅぅぅ」

「……」


小栖立さんは顔を真赤にして僕から目を逸らす。


「…これ、食べます?」


僕は自分のカバンの中に入っている干し肉を小栖立さんに差し出す。ちなみにカバンは転移したときに一緒についてきた学校のカバンだ。


「い、いやでも…これは」

「何度も言いますけど、僕ご飯入りませんから。不死身なので食わなくても問題ないんですよ。」


むしろ食わないで餓死できたらいいな―なんて考えてるし。


「それなら、一緒に食べよ…ね?」

「遠慮しときます。」


一緒に…と干し肉を差し出してきたその手を押し返して僕は先に歩いていった。



・・・・



「…やっぱり食べてくれないか…」


物語くんは…食べ物を食べない…私は彼が何かを口にしているところを少なくともこの3ヶ月間一度も見ていない。


私はそんな彼が心配だった。


彼は、自分は不死身だから大丈夫だとは言うけど実際不死身だろうが痛いものは痛いし、お腹も空いているはずなのに…


実際私は日本にいた頃、学校生活を送る中で彼が昼に何かを食べているところを見たことがなかったと思う。


そしていつも1人でいた…


「どうして…どうして私は…」


彼がいくら1人でいようと…それをネタにいじめられようと私は注意もそこそこに、私は自分自身を守るために関わろうとしてこなかった。


今になって後悔ばかりだ…私…


・・・・


「ん?」


小栖立さんよりも先に歩いていた僕はふと違和感を感じたので周りを見渡すと人の気配がしていることに気づいた。


「あの草むらのところか…ッ!」


人の気配がする場所からゆっくりと離れていく。なぜならこの気配には覚えがあったからだ。


そうこの気配は確か同じクラスの―


その瞬間草むらが激しく音を立てて、勢いよく人が出てきた。


「ガサガサッ!!」


僕は無言で顔を隠す。


なぜかって?それは彼女が―


「あれ?君は…確か…あ!物語くんじゃん!!」

「……」

「どうしてここに…?いや!それよりもさ!」


「助けてくんない?」


―ヤバい人だからだ―









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