第七死 野宿
「スタスタ」
「スタスタ」
「……」
「スタスタスタスタ」
「スタスタスタスタ」
「………」
「スタスタスタスタスタスタ」
「スタスタスタスタスタスタ」
どこまで歩いても木、木、木、木、木!ずっと同じ光景が続くこの状況に正直僕はうんざりしていた。
「スタスタ」
「……」
うんざりと言えばもう一つ…
「……あの…何で僕についてくるんですか…」
「?」
彼女…小栖立 奈々が先程からずっとついてきていることだ。
「いや、そんな『何言ってんのこいつ?』みたいな顔されても!」
正直死にたい僕からすると彼女がいる状況は非常にまずい。え?それはなぜかって?
理由は彼女が過保護すぎるからだ。
実はさっき、ツタかなんかで腕を少し切ってしまったとき…彼女…小栖立さんはものすごく動揺をし、僕の世話を仰々しくやり始めたのだ。
そんな彼女がついてきて近くにいたらどうする。僕が死ぬのを止めるに決まってる。だからなんとしてでも小栖立さんと離れないと…!
「あ、あの…小栖立さん。」
「…ッ!」
試しに話しかけると小栖立さんはすごい勢いで僕に顔を近づけ、
「初めて…」
「え?」
「今!私の名前を物語くん初めて呼んでくれた!!」
「??」
やばい…ここにきてますます意味がわからなくなった。この人こんなキャラだったっけ?もっと尖ってた印象あるんだけど!?
「私の名前、覚えてくれてたんだ!!なんなら知らないと思ってたのに。」
「ま、まあ、クラスメイト…ですし?」
ちなみに抱きつかれたときに至近距離で顔を見て初めて小栖立 奈々だと気づいたのは内緒だ。
「嬉しいな。…いや待った…私の名前を覚えていた…つまりは両思い…これはもう結婚では?」
なんかブツブツ言い出した…怖い。
閑話休題
「それで…いつまでついてくるつもりなんですか?」
「え?ずっと永久にだけど?」
怖い怖い…この人なんか目がすわってるんだけど…
・・・・
それからしばらくなんの進展もないまま僕達は変わらず歩き続けていた。そんなときふと空を見上げるともう日が沈みだしていた。
「はぁ…とりあえずさっき件はおいておいてそろそろ日が沈むので野宿の準備をしましょう。」
「わかった。」
そして僕は慣れた手つきで野宿の準備をし始める。最も今回は薪を拾って火をつけ暖をとるだけなんだけど。
「すごいスムーズに進む!物語くん結構慣れてるけど、こういうのやったことあるの?」
僕が木をこすり火をつけてると、どこからか薪を持ってきた小栖立さんが火を見ながら聞いてきた。
「昔森みたいなところで暮らしていた時期があって、それで身についたんですよ。」
「……ッ」
すると急に顔をそらす小栖立さん。
どうしたんだ?
「小栖立さん…?」
「え?あ、あぁなんでもないよ…」
?
…それからしばらくして
「小栖立さん寝てていいですよ。見張りは僕がするので。」
「ダメ。物語くんこそ寝るべきよ。見張りは私がやる。」
「い、いやでも僕が…」
「大丈夫。だから安心して寝ていいんだよ。助けてくれたお礼もまだ返せてないし…」
「わ、わかりました…」
このとき、なぜここまで真が小栖立に対して食い下がったのか…もちろん小栖立は純粋に休んでほしいという気持ちから見張り役をかって出たが、
物語 真…死ぬこと以外に基本興味のない彼がなぜ小栖立に対してなぜここまで優しさを見せたのか…
それは彼女が寝ている間に逃亡しようと考えていたからに他ならない。文字通り清々しいまでのクズである。
なお小栖立の純粋さにやられ、かってに自滅したのはいうまでもないだろう…
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