第五死 小栖立 奈々視点①

私の名前は小栖立 奈々(こりすだち なな)


今日も今日とて同級生や後輩達と挨拶を交わ

しながら教室へと向かう。教室に着くとすでに何人かクラスメイトが来ていて友人と話したり席について本を読んだりしていた。


「小栖ッおっはよ~!」

「キャッ!」


誰かの声が聞こえたと同時に抱きつかれた私は驚いてしまった。その声の主の正体がわかったのは抱きつかれてから数秒後のことだった。


「もう…驚いたじゃない!なにするの水波…」

「あはははは、ごめんごめん小栖が可愛くてつい…」

「つい…じゃないよもう…!」


そんな平和な会話を今日も私達は続けていた。それからしばらくしてチャイムがなったので私は学級委員長としてみんなに着席の声がけを行い自分も席へと着く。


ボーと外の景色を眺めていると、今にも雨が降りそうな天気で、自分が傘を持ってきてないことに気づいた。



「あ、雨…」


思った通りポツポツと雨が振り始め、どうしようかと悩んでいたときだった。


「うわッ!なんだこれ!!」


突然教室の床が白く光り出し、その光は徐々に輝きを増していった。やがて気づいたときには私は知らない森の中にいた。その場にはクラスメイト達もいて私はただ困惑することしかできなかった。


「小栖〜!!」

「水波!!」


こんな意味のわからない状況下で友達の水波がいたことに私はひとまず安堵する。


「これどういう状況なんだろう。」

「うーん…」


周りを見渡してみると他のクラスメイトも概ね私たちと同じ考えらしく、皆困惑していた。


「よっしぁぁぁぁ!これ異世界転移ってやつじゃね!」


中には喜んでいる人もいたけど。


「茂陰(もかげ)くんあんなキャラだったっけ…?」

「キャラ…変とか?」

「あれをキャラ変で済まして良いの?!」


あいも変わらずツッコミの激しい水波。水波の容姿は同性の私からみても可愛く、髪をポニーテールにして結んでいる青髪の女の子。その性格はとても元気で明るく誰にでも好かれるような性格をしている。


「キェェェェェェ!!」

「奇声あげてるけど?!え、大丈夫なの?!」

「大丈夫でしょう。」

「学級委員長!?」


そんな会話をしていると


「あ、あの!皆さんまずは落ち着いてください!」


担任の先生である菊花 悠菜(きくばな ゆうな)先生が小さい背を一生懸命に伸ばしながら私達を落ち着かせようとしていた。


しかしそれでも生徒たちの混乱は悪化していく一方で、


「あれ…物語くん…?」

「ん?小栖どうしたの?」

「い、いや今物語くんがそこの茂みの方に行っちゃって…」

「物語くん…?誰?」


じとー


「な、なに?」

「水波…クラスメイトの名前くらい覚えようね。」

「そんな目でこっちを見ないでってばあ…」

「あ、あの皆さん!!」

「―みんな!!先生が話しているんだ静かに聞こうよ!!」


声を上げたのは私たちの学校でも1位2位を争うくらいのイケメンと言われている左神原 煌人(さがみはら きらと)くん、そして彼はクラスの副学級委員長でもある。


「うわ…静かになった。きらっちは相変わらずの人望ですな。」

「すごいよね。」


みんなが彼のことをかっこいいという中でも私は大して興味がなかった。確かに顔はかっこいいとは思う。でもそれ以上の感情は何も湧いてこない。


私は自分で言うのなんだが人並み以上には顔が整っているとは思う。昔からよく告白やナンパされることが多くその経験から恋愛に関しては人一倍敏感になった気がする。


「と、とりあえず皆さん集まってください!みんな揃っていますかー?」


菊花先生が落ち着きを取り戻しつつあるみんなを集め点呼を始めようとしていた。


その時だった


『グォォォォォォウ!!』


誰のものでもないとても…とても大きな雄叫び。とても信じられないが巨大な体が見えていたため向かってきているのは一目瞭然だった。


そしてそこからは悪夢が始まった。



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