第四死 困惑

「はァ…また死ねなかった…」


あのあと化け物が逃げてくのを見て困惑していた僕は、すぐにハッとなりあの化け物を追いかけようとしたのだが…


「あーあ…だめだ体がぐちゃぐちゃ、再生に少し時間がかかるな。」


それで結局あの化け物は逃げ、僕は死に損なったというわけだ。


まあ、薄々気づいてはいたけど異世界に来てまでもこののろいは健在なのか…


う〜ん今度は溺死でも試してみようかな…?


とまあそんな事を考えていると


「物語くんッ!!」


後ろから突然僕を呼ぶ声が聞こえた。そう…僕は忘れていたのだ。人助けをしている最中だということを。


「なんでッどうしてこんなッ…」


振り向くと少女は泣いていた。


「ッ!」


な、なんで泣いているんだ…?今の僕の姿、女の子にはちょっとグロテスクすぎたか?!


いくら人格が欠如していると自覚のある僕でも流石に女の子泣かしたままっていうのは…


「大丈夫…?」


それで泣いている女の子に恐る恐る聞いたのだが、それを聞いた瞬間女の子は顔を上げ、


「大丈夫って…まずは自分の心配をしてよッ…私よりもあなたのほうが!」


泣きじゃくった顔をますますしわくちゃにして怒っていた。


「あぁ、僕なら大丈夫ですよ。僕は死ねないから。」

「死ねないって…」


少女を安心させる為にも僕は証拠と言わんばかりに治りかけていた腕をもう片方の手で躊躇なく叩き折った。


「ほら、この通りなんとも―」

「―何してるの!?」

「え?」


折った部分を再生すれば安心してくれるかなって思ったんだけど…怒られてしまった。


「で、でもほら綺麗さっぱり治りましたよ。」


僕はその場で腕を振ってみせる。


「でも…治るっていっても、痛いものは痛いでしょ…?」

「あーいや、最初のうちは痛かったり苦しかったりで転げ回ったりしてたんですけど(自殺を)何回もやってるうちに慣れてきて今では痛みは感じないんですよね。」

「…ッ」


見ると何故か顔を伏せている女の子。どうしたんだ…?


「あ、あの…」


『どうしたんですか』そう声をかけようとした次の瞬間なぜか抱きつかれていた。


え?なんで?!


「ちょっ…え?!」

「もういいの…もういいのよ…これからは私があなたのことを守る。いえ…必ず守ってみせるから!」


……なんでこうなった…?


「それと…助けてくれてありがとう!」

「ど、どういたしまして…?」


意味のわからないこの状況に僕は只々困惑するだけなのだった。






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