小栖立 奈々編

第一死 落下死

「うーむ」


現在僕は木の上にいる。なぜかって?決まってるじゃないか、死ぬためだよ。


異世界へと突然飛ばされ『今なら死ねるかも』と思った僕は、クラスメイトたちのいる場所から一人離れて森の奥深くまで来ていた。


そこで一通りどういう死に方をしようかと考えたところ、ちょうど目の前にものすごく高い木があったので


『そうだ!落下死しよう!』


そして現在に至るというわけだ。


「この木の高さは…だいたいビル10階建てってところかな。にしてもこんなに高い木がそこら辺にあるなんて…さすが異世界って感じだな。」


下を見れば硬い地面、これは確実に死ねるだろ。そう思った僕はいざ飛んで…


「ドォォォォン!!」

「キャァァァ!!」


その音は段々とこちらに近づいてきているようだった。やがてそれは目を凝らせば見えるところまで来ていて、よく見てみると小さい女の子が、1つ目の化け物に追いかけられているところだった。


「……いや、気にするな僕。やっと死ねるんだぞ。他人なんて助けている暇はあるのか…」


そんなことをしている間にもその化け物はどんどん近づいてきている。


「さあ飛び降りるんだ。」




「誰か…助けてッ…」

「…ッ」


気づけば僕は木の上から飛び降りていた。



・・・・



「どうして…どうしてこんな…」

「グゥォォウ!!」

「ひッ!」


突然変な場所に飛ばされて、こんな化け物に襲われて…私はただいつも通りの生活を続けていただけなのに…こんな目に合うほど悪いこと私…したかな…


「グゥォォォォァァァ!!」


死にたくないよ…まだ生きていたいよ…


誰か…


「誰か…助けてッ…」


だけどその願いは虚しくも届かず…今まさに化け物が片手に持った巨大なこん棒を振り下ろそうとしていたときだった。


「ズドォォォォン!!」


目の前から突然大きな音がしたかと思うと砂埃が舞い上がり…


「ほら…やっぱり死ねない。」


目の前に一つの人影が見えた。


「なぁ、お前なら僕のことをか?」


砂埃が晴れやがて露わになったそれは、頼もしくも、どこか危うい雰囲気をまとった背中だった。





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