第二死 嘘
「ほら…やっぱり死ねない。」
落下死を試みようとした僕は落ちるには落ちたが、五体満足ピンピンしていた。
「ん?」
落ちた所から立ち上がり目の前を見ると、ものすごくでかい1つ目の化け物が立っていた。
さっきは遠くにいたから気づかなかったけどいざ目の前にしてみるとでかいな…
「いや…待てよ…これなら…」
僕は一つの期待を胸にその化け物へと問いかけた。
「なぁ、お前なら僕のことを殺せるか?」
そして僕は無抵抗なのを相手に示すために両手を大きく広げその場に留まった。
「グゥォォォォウ!!」
やがてその化け物はこん棒を大きく掲げそれを…振り下ろした。
「ダメッ!!」
「なッ」
気づけば僕は何者かに突き飛ばされ地面に転がっていた。横を見れば僕を突き飛ばしたと思われる少女がいて、その少女も同じく地面にひれ伏していた。
「何を…」
『何をするんだ』…僕がそう言いかけたところで遮るように少女が喋りだした。
「大丈夫?!どこも怪我はない?」
「…?…大丈夫ですけど…」
僕が困惑しながらも問題ない旨を伝えると少女はただ安心したように
「よかった…」
と言葉をこぼした。
「助けようとしてくれてありがとう…それだけで私は十分救われたよ。だからあなただけでも逃げて。時間は私が稼ぐから!」
そう言いながら立ち上がる少女。その目は決意で満ち溢れていた。
だけど…
せっかく死ねるチャンスなんだ。逃げるなんてまさかするはずがない。そう思い僕は立ち上がる。
「どうして…」
少女の横を通り過ぎたときにそんな言葉が聞こえた気がした。
僕は僕の望みを叶えるためにいつも誰かに嘘を付く。それはここでも変わらない。
「下がってて…」
「どうしてッどうして私なんかの為にそこまで…」
今度ははっきりと聞こえたその言葉…ならば納得をするような嘘で返そう。
それで彼女が納得をするのならば…
それで僕の願いが叶うならば…
「君を助けたいから。」
その言葉を最後に僕は化け物へと一直線に近づいていった。
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