第12話 卒園

数年の月日が経った。そして真白の幼稚園の卒園の日がやってきた。


「卒園児、入場!」


幼稚園の小さめの体育館の中に在園児と保護者がイスに座りそわそわしている。保護者の中には既に涙を流しそうになっている人も居れば、カメラを構える人も居る。


「在園児並びに保護者の方々も、大きな拍手でお出迎え下さい!」


パチパチパチパチと拍手の音が体育館内に響く。

そして胸を張った園児達が2列に並んで手を繋ぎながら入場する。


「あなた!しっかり撮ってよ!」「ああ、なんてうちの子はカワイイんだ…」「もう!こっちを見ずにちゃんと前を向いて歩いて!ああ!手は振らなくていいから!」「………」「ほらあなた。私達の子よ?」「ああ…あぁ!」「なあ!やっぱりうちの子は世界一だな!」「ええそうね!」


園児達が前のイスに座る。


「みなさん、お静かに。………はい。それでは、式根幼稚園卒園式の開式とさせていただきます。それでは……起立!気を付け!礼!…着席!」


園児達は何度も練習した通りに、少し間違いそうな子供も居たが、おおむね正しく出来た。


「それでは、園長より卒園証書の授与となります!名前の呼ばれた園児は前へ!では園長」

「うむ」


式根幼稚園の園長が前に出る。そして名前が呼ばれ始める。カメラのシャッター音が大きく響く。


浅葱あさぎ 由香里ゆかり」「はい!」

荒川あらかわ 隆太りゅうた」「はい!」

関平かんだいら 東野とうや」「はい」

希世きせ 環奈かんな」「はぁい!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜「雪城 真白」「はい!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

湾内わんない りん」「はい!」


「これにて卒園証書の授与を終わります!

次に園長より、式辞!」


「はい、えーこの度は卒園児へ卒園おめでとう申し上げます。

えーこれからあなた達はこの小さな幼稚園からもっと大きな世界へと飛び立つ事となります。

えーこの幼稚園で学んだこと。出来た友達。先生方を忘れることなく、えーより大きな成長をえーお祈り申し上げます。

えーお集まりの皆さんには益々のご健勝をお祈り申し上げ、お祝いの言葉と結ばせていただきます。

えー…はい。以上です」


「園長先生ありがとうございました。

……それでは次に、来賓紹介!PTA会長、さかい 麗子れいこ様!」


「はい。紹介いただきました、堺麗子です。本日は、このような喜ばしい場にお招きいただきまして、厚くお礼申し上げます。

これからも多数の苦難があると思われますが、家族や友人、あるいは先生方でも良いので、困ったら誰かに相談しましょう。私達大人はあなた達の幸せを第一に考えています。

以上です」


「はい。ありがとうございました。次に辻堂市市長堂本どうもと 尚郎しょうろう様!」


「紹介されました堂本です。

ほとんどの事を言われてしまいましたので手短に、何時でも大人を頼りなさい。

子は未来を作る担い手です。親の、市の、何より国の宝です。体を壊さないように気を付けてお過ごしください。親の方々は子供から目を離さず、しっかりと見守りください。

以上です」


「はい。ありがとうございました。それでは卒園式を終わります。起立!気を付け!礼!……親御さんの下へお帰りください」


「「「「「わーー!!」」」」」


園児達は親の下へと走っていく。在園児は来賓紹介の時点から元の教室へと戻っている。


「真白〜!立派だったぞ!」

「ええ!ええ!ホントに立派でかっこよかったわ!」

「お父さんお母さん泣かないで?先生にも挨拶しなくちゃダメなんだから」


「ああ!でも、もう少し待ってくれ…。まだ涙が収まらないんだ…」

「私も、私ももう少し待って…」

「うん!」


それから十分ほど経ち、落ち着いた2人を連れ先生の下へと向かう。


「まりこ先生!」

「あら?真白君じゃない」


「ありがとうございました!」

「フフ、はい。これからも元気に育ってね?」


「はい!」

「万里子先生。これまでうちの真白がお世話になりました」

「私からも、真白に色々と楽しい事を教えて下さりありがとうございます」


「いえいえ、私も実利ゴホッ、教えることは苦ではなかったので。これからは環境も変わるでしょうからどうかお気を付け下さい」

「はい。ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「ありがとうございました!」


「それじゃあ、行ってらっしゃい」

「はい!行って来ます!」


そして幼稚園から親子は出ていった。













          幼稚園編完……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る