　男性読者には「BLかぁ……」でそっ閉じされ、女性読者には絵柄で敬遠されるかもしれない……それでも私はおすすめしたい。

◆『天草理人の里帰り』toufu

　名作ファンタジー『Lv1魔王とワンルーム勇者』の作者様が描いたブロマンス短編です。

　男子高生・理（り）人（ひと）はある日、学校をサボって生まれ故郷の町にふらりと戻って来ます。

　その足が向いた先は、幼なじみだった健（けん）太（た）の家。しみじみと思い出を振り返る理人でしたが、折しも玄関から出てきた健太とばったり鉢合わせするのでした。

　優等生の理人と不良の健太、三年ぶりの再会でした。気の置けない二人の会話に和（なご）ませられながらも、どことなく漂う不穏な匂いを読者は感じ取ります。

　国道沿いのゲーセンでわちゃわちゃ。クレーンゲームには魔王様が友情出演。男子だけでプリクラ入れる時空があったっていいじゃない。

　スーパー銭湯での裸の付き合いは眼福。二人の仕草や表情の一つ一つが生き生きしていてまぶしいです。男子同士で交わし合う言葉もコミカルに、小気味よく心に響きます。

　――と、ここまでが前半のお話。次いで明かされる、理人と健太の凄惨な過去には胸をかき乱されました。

　詳しくは書きませんが、後半のハイライトとなる土砂降りのシーンはとても感動的です。◯◯さん（ネタバレ回避）よく冷静でいられたなぁと思います。内心は分かりませんけど。

　もし私があんな場面に出くわしたら「うっひょぉあ～っ!!」と声を出して叫ばない自信がありません。実際にページをめくった瞬間、口角が上がりすぎて天井を突き抜けました。修繕費を請求します。

　総評いたしますと、熱く爽やかな友情に心洗われる、傑作読み切り作品です。BLやブロマンスに抵抗のない方であれば、存分におすすめできます。

　余談ですが、本作読了後、健×理の濃厚なアフターストーリーが脳内で繰り広げられる不具合が私に発生しました。修理代を請求します。

　おふざけはこれぐらいにして――と言おうと思いましたが、すでに感想はあらかた語り終えておりました。無念。

　それにしても「作者様はこんな作風もイケるんだ」と非常に感銘を受ける一方、思えば『Lv1魔王とワンルーム勇者』でもレオとフレッドの熱い関係がありました。言うほど意外性はないのかもしれません。

　なお、本作は同作者様の『Lv1魔王とワンルーム勇者』や『魔界JKアンラ・マンユ』（こちらも傑作）も配信中のWEB/アプリ「COMIC FUZ」に掲載されています。

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