42. 『僕の心のヤバイやつ』11巻+『小説 僕の心のヤバイやつ』

 アニメ化もされた人気ラブコメ『僕ヤバ』の最新刊と外伝小説です。



◆『僕の心のヤバイやつ』(11)桜井のりお


 前半のハイライトは、サプライズ告白~夏祭りの一連のエピソードに尽きます。市川いちかわやまの絆の深さを再確認したのと、カンカン・ばやしこ・ナンパイらそれぞれの成長がまぶしいです。


 後半は芸能人としての山田を取り巻く重いテーマが中心。中学生にして社会という相手と向き合わなければならない苦難にも、市川は愛の力で立ち向かいます。



 個人的な注目は次の三点でしょうか。


①図書室で決めたサインの使い所&使い方。そうくるかー、と感心しました。勿論、市川と山田がこれまでに築き上げてきた関係あってのことなのですが。


②夏祭りのばやしこ。「こりゃ気付いてないな」→「本当は気付いてた!?」→「やっぱ気付いてなかった……けど、山田と市川のことそんな風に思ってくれてたんだ!」の三段構えには心底感動しました。


③市川に告白失敗の真相を打ち明けられただちの反応が正直(笑)。祝福と嫉妬の間で反復横跳びする足立の情緒と、それを心配する市川の図が秀逸です。



 他にも、もえの進学問題は重要なサブテーマですよね。迷っていた背中を押す役目が市川だったのには無二の友情を感じます。高校学園祭での決意表明は気の利いた言い回しで、かつ爽やかな後味が印象的でした。



 そして我らが市川と山田の関係は……連載最新話付近だと、かなりドキドキの展開です。このままでは次巻前半で相当刺激的なことになるのでは!? それともギャグでかわすのか? 結果に期待が高まります。




◆『小説 僕の心のヤバイやつ』望公太/桜井のりお/sune


 スピンオフ小説は4篇+α。本編の隙間を埋めるサイドストーリーです。


◇『プロローグ』

 市川いちかわの独白はこれまでの振り返り。恋したことで他者を意識し、自分を俯瞰するようになる、その過程に激しく共感。



◇『関根萌子は一歩踏み出す』

 やまと市川の関係をそばで見守ってきたもえ視点のお話。いつメンだけでなく、兄やだちとの会話を通じて自分を見つめ直す様が新鮮でした。



◇『僕はカードゲームがしたい』

 市川が思い返す小学生の記憶はスーパーレアな女神との出会いから。ひょんなことから山田とカードゲーム→イチャイチャはお約束ですね。



◇『神崎健太は触ってみる』

 男子のエ□トーク……「ラブハンドル」とは新しい知見を得ました。神崎かんざきはエロスもはらさん愛もド安定。原作Wデート回の裏側も語られます。



◇『山田ママは告白させたい』

 原作での合宿前日譚は市川VS山田パパ、男の勝負。山田母娘の語らいで明かされる夫婦の馴れ初めにニヤニヤ。ちなみに山田のバニーフィギュアは実在します。



◇『エピローグ』

 十年後の市川と山田。原作のアレやコレも拾われて嬉しい。こんな未来がきっと実現されると読者は信じておりますとも。


 ノベライズ作者様のあとがきも原作ファンならではの熱量で、本作の解像度の高さにも納得。イメージに沿った挿絵もとても可愛らしかったです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る