　安心と信頼の田滝先生。コメディの名手は同人誌も商業作品もハズレなしです。

◆『タワマンで不幸にならない方法』(1)田滝ききき

　タワーマンションに住むのが夢のOL・いちごはのっけから俗っぽさ全開。合コンで知り合ったチャラ男・青（あお）木（き）がタワマン住みと聞き、ホイホイ付いて行くスピード感で笑ってしまいます。ベッドイン寸前で青木が家主女のヒモだとバレて、波乱の幕開けとなるのでした。

　ここで懲（こ）りないのがいちごの凄いところ。家主・恭（きょう）子（こ）の所へ舞い戻って同居の提案、念願のタワマン住人の地位を手に入れるしたたかさが魅力です。

　一方で判明する、いちごの悲しい背景は身につまされます。

　地方の閉塞感、都会への憧れ、そして悟る「女は勉強しても無駄」。親の払う学費も男兄弟優先だし、稼げる男を捕まえて生きていく方が正しいのだから……。

　でも！　私はもうタワマンを手に入れたので！　男に媚びる必要なしと判断してからの、いちごの切り換えの早さには舌を巻きます。こういうところ本当に頼もしくて好きです。

　恭子さんは弁護士。自分一人の力で切り開いてきた人生に不満はなかったのですが、ふと生まれた心の隙間を青木に付け込まれてしまいます。

　そこへ颯爽（さっそう）と現れたのが、我らが主人公いちごちゃんだったのです。改めて青木の追い出し＆復讐を提案。自分を棚に上げて青木を寄生虫（ハリガネムシ）扱いする痛快さ。最後に引導を渡す恭子さんの姿も素敵でした。

　しかし一件落着も束の間、タワマンのボスマダム登場で、さらなる大波乱が始まりを告げて……続く次巻。

　あとがきで明かされる本作の誕生秘話。例の同人誌（もう一つの『タワマン』）の方も勿論拝読しております（成人向けなので感想は控えます）。

　作者様は百合にも造詣が深くてらっしゃるので、いちごちゃんと恭子さんの今後にも何かと期待してしまいます。

　なお、以前のエッセイにて同先生の過去作も紹介しております（下記リンク）。

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