11. 『気になってる人が男じゃなかった』VOL.1/VOL.2

 百合&ロック好きとして「気になって」いた話題作をようやくチェック。



◆『気になってる人が男じゃなかった』(1)(2)新井すみこ


 音楽好きのギャル・あやがCDショップで出会ったバイトの「お兄さん」はクラスの陰キャ女子・みつきでした――という誤解から始まる物語。無自覚に王子様ムーブするみつきと、乙女心全開なあやとの相性は抜群です。


 陰のみつきと陽のあや。生き方こそ違いますが、二人とも音楽の趣味で孤立したり、周りに気を使ったりしているのが共感できてしまいます。洋楽好きって、同年代と話が合わないことが多くて苦労するんですよね……。


 好きな音楽でつながれる仲がうらやましくもまぶしく映ります。Sp◯tifyのプレイリストを送り合ったり、新曲をシェアし合ったりするところなんかは今風でいいですね。



 作中で登場するのは実在するロックの名曲ばかり。選曲の8、9割がおなじみのナンバーで親近感が湧きます。部分的に好みが重なっているのも嬉しいです。


 個人的な一推しは、修学旅行(2巻収録)の夜に流れる「Tonight, Tonight」です。THE SMASHING PUMPKINSは十代のナイーブな心に突き刺さりますものね(実体験)。終盤の歌詞が二人の心情や関係とリンクして胸がいっぱいになります。



 細かい部分だと、章タイトルも洋ロックネタですね。1巻後半、仲直りのステージでみつきが弾いていたのはRADIOHEADでした。こちらも悩める十代御用達のナンバーで納得。


 それと、みつきのギターが(テレキャスやジャガーではなくて)ストラトなのも解釈一致。ステージでの立ち姿も様になります。何より、好きな女のために作った曲を演るのは最高にロックだぜ!ってことです。



 音楽の話以外でも、時に寄り添い、時にすれ違う二人のドラマにはしきりに心動かされます。


 みつきの部屋にあやが押しかけるシーンは、泣き出すあやをみつきが慰めるところまで含めてお気に入りです。同じ2巻部分では、二人が帰り道で小指を絡ませる場面も印象的でした。



 ガーリーな文化に馴染めないみつきの過去話(1巻描き下ろし)は、割と普遍的な悩みにも思えます。自分の中では完全に割り切れていても、周囲がそれを許してくれなかったり……難しいですよね。


 そんな中、現在のみつきたちを取り巻く人たちの優しさが沁みます。

 とくに、みつきの叔父・ジョーさんや、一見チャラ男ななりくんたち男性陣が、みつあやのキューピッド役として活躍してくれるのが頼もしいです。


 そして肝心の主役、みつあやの関係ですが、2巻時点ではまだ百合未満という感じ。友情なのか、はたまたそれ以上に進展するのか、今後の行方を「見守り隊」です。

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