10. 『悪いが私は百合じゃない』7巻

 タイトル詐欺もはなはだしい(今さら)な百合コメディ。従来の漫画力の高さに加えて、巻を追うごとにコマ割りも画力も演出も凄みを増しています。



◆『悪いが私は百合じゃない』(7)もちオーレ


 今巻はドッジボール編の続きから決着(+その後)まで。白熱する勝負の行方は勿論、その裏で入り乱れる多数のキャラクターの心情描写からも目が離せません。



 りんちゃんと黒姫くろひめさんは、いつみに向ける純情な感情が微笑ましいやら切ないやら。

 片やツンデレ後輩(圧倒的正妻!)、片や少女漫画のようなピュア恋(ただしドスケベ下着着用)が可愛らしいです。


 対決の発端となった委員長×ばんりゅうを筆頭に、ロキ×マイややなぎ×かわさんたち、試合を通じてお互いの絆を深めたカップルたちも愛おしくてたまりません。一人ひとりも精神的に成長しているのが、見守ってきた読者としても嬉しいですよね。


 そしてただ一人ヒール役を背負うつばさの勝負魂が限りなく熱いです。先生にいい所を見せたいがための頑張りがとても純真で、こっちまで胸がキュンキュンしてしまいます。先生に想いが届いてよかったね、と心から祝福してあげたいです。



 スポ根全開のドッジ対決も、手に汗握る駆け引きとアクションの応酬で、終始見どころがいっぱいでした。


 翼無双、回避特化いつみ、仮面ロキ覚醒、真打ち柳登場……などなど、名シーンは枚挙に暇がありません。


 しかし何と言っても最終局面、いつみ→柳→根川の連携プレイは胸熱でした。疲労で限界になったいつみの脳裏に響く凛ちゃんの声……ヒロインと過ごした日々を思い出して覚醒するヒーローそのものじゃないですか!


 これを始め、要所要所で仲間を気遣ういつみの主人公ムーブが光っていましたね。でも無自覚ジゴロは程々にしないと、ジェラシー凛ちゃんのキルリストが充実してしまいそうです(笑)。



 試合後の爽やかな光景は、まるで青春群像劇……と言いたいところですが、一人だけブレないるるのゲスさが頼もしいです。


 バンドの練習風景、SGやスティングレイという楽器のチョイスから透けて見える音楽性が気になりんぐ。いつみが取り付けた残るバンドメンバーの当てとは……?



 単行本描き下ろしは柳×根川さん。着々と進展してるようで何より。

 カバー裏のうおうさおう姉妹、業が深いな……と一瞬思いましたが、もちオーレ先生的には通常営業ですよね。

 というわけで、続く次巻では『ゆりなつ』姉妹の近況も拝めるのでしょうか。楽しみです。

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