7. 『ケンガンオメガ』23巻

 前作『ケンガンアシュラ』(アニメも視聴済み)から追いかけ続けています。



◆『ケンガンオメガ』(23)サンドロビッチ・ヤバ子/だろめおん


 アギトVSあらしやまは息を呑む攻防の連続。打・投・極、何でもありの頂上対決をこうも鮮明かつ克明に、何よりもドラマティックに描き切る筆力に感服です。

 それはそうと、嵐山のぐろ殿への執着が重症化していて笑え……ない!


 続くはつVSかねは趣きがガラリと変わります。いずれも入神の域へ至った技の対決は、まるで超一流の棋士同士のよう。人知を尽した読み合い、騙し合い、誘い込み、切り返し……その決着は実に紙一重でした。


 二仕合とも、どちらがどの瞬間に勝ってもおかしくないと思わせられる素晴らしい内容でした。本当に濃密で見どころも多く、目の離せないバトルです。



 ここで物語は唐突に新たなフェーズへ。トリックスター・シェン羅漢ローハンのエントリーとともに、拳願会は最大の危機を迎えます。


 しかし、それすらも序の口でした。まさかのラスボス自らの来訪で、読者の緊張感も最高潮に達します。

 ステルス歩法で迫り来る神話級の生物、繋がる者を認識できるてらしもまた、伝説を継ぐの暗殺者であったことを思い知らされます。


 味方勢力の上澄みともいえる精鋭たちが、束になっても届かないシェン武龍ウーロン。彼を盾とした蟲の要求を一も二もなくね付けたのは、敵方の自作自演をいち早く見抜いた切れ者・乃木のぎ会長でした。次巻へ続く。



 描き下ろしは本作の前日譚……にかこつけた『ダンベル何キロ持てる?』『一勝千金』とのコラボ。ショートギャグが一服の清涼剤となって沁み渡ります。



 恒例のカバー裏ギャラリー、とまり女史の登場率高めなのいいですよね。本編でも同じコマにいることの多い理乃りのとの仲は今どんな感じなのでしょう。百合オタとして前作から注目を続けているキャラです。


 一方で裏表紙のシルエットは……むろ!? 本巻の表紙は金田(妙に艶っぽい!)、しかも両者に包帯の描写、ということは……考察が捗りますねぇ(ニチャァ)。


 格闘漫画というジャンルにありながら、百合・薔薇に両対応する懐の深さには畏敬の念すら覚えます(個人の感想です)。



 それと完全に余談ですが、個人的にとても感心しているのが、本作における「A級」闘士や解放率「100%」などの描写です。「S級」とか「120%」の安易な安売りに走らず、きっちりとした線引きができていることがうかがえます。


 こういった小さな積み重ねが、ともすると荒唐こうとうけいに傾きがちなバトルのリアリティ担保に作用しているのでしょうね。

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