6. 『ルックバック』/『オナ禁エスパー 竜丸短編集』〈単巻〉
◆『ルックバック』藤本タツキ
すでに散々語られているので、真野の口からは言うことがあまり残っていません。公開即日読破しましたが、掛け値なしの名作と断言します。
手に取ったきっかけは、百合の気配を感じたからです(正直)。以前にタツキ先生の短編『妹の姉』(後に『藤本タツキ短編集 22-26』へ収録)を読んだことがあり、極上の姉妹百合として心に残っていたのですよね。
タイトルが作中で重要なモチーフとなって繰り返されますが、中でもそのものずばりな「look back=背中を見ろ」の仕掛けには心打たれました。
個人的に最も刺さったのは、京本の部屋の外に積み上がるスケッチブックの描写です。
真野もむか~し一生懸命に絵を描いていた時期がありまして……お金がなかったのでスケブよりもノートやチラシの裏が大半でしたけれど。
まあ、どれだけ描いてもちっとも上手くなりませんでした。描き溜めた紙はほぼ全部燃えるゴミに出しました。Don't look backです。そんな苦い思い出を呼び覚ましてくれる作品でもあります。
物を作ったり、表現したりすることなしには生きられない人間が、この世には一定数います。
どんなときでも、絵描きは絵を描くしかないし、物書きは文章を書くしかないのです。
◆『オナ禁エスパー 竜丸短編集』竜丸
公開当時、界隈を騒然とさせた問題作が表題です。
『オナ禁エスパー』禁欲により超能力を得た少年の戦い。色々ヒドい(褒め言葉)のに何故か感動する不思議。ヒロイン告白のどんでん返しにも、しっかり伏線が張られているのに感動します。変態であり純愛なのです。
『しゃばだば』家出少女たちの反抗。「世界と損得なしに戦える時間」の尊さと眩しさが刺さります。
『イン・ザ・グラウンド』これまたダメ人間しか出てこない……。下着泥棒よりも、どこか危うい姉弟愛に目が行きます。人の業みたいなものが味わい深いです。
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