ギルドと契約していた最強冒険者、配信者に晒されたので契約通り冒険者を辞めて別世界に旅立つ。

笑顔の傘

そして最強冒険者が捨てた世界は滅んだ。

この世にダンジョンが出来た世界で最強の冒険者。それは誰か?

 

『勇者』と呼ばれている男?『英雄』と呼ばれている女?

 

 違う。最強の冒険者はそんな分かりやすい存在では無い。そう言う二つ名が付く奴らは冒険者を増やす為の看板であり駒なのだ。二つ名は雑魚だ。


 そもそも二つ名とはなんぞやと言う話だが、二つ名は有名配信者の名前であり、ギルドがつけた物ではない。要するに配信者は自分の事を『勇者』だの『英雄』だの名乗っているのだ。もちろん冒険者としての実績はほとんどない。ギルドから見れば配信をしている冒険者なんてただ痛々しいだけの雑魚なのだ。

 

 なので二つ名を調子に乗らせる。冒険者を増やす為に。

 

 世界中のギルドの上層部は本物の最強を知っている。その気になれば世界を破壊できる程強い冒険者を。しかしその人物は目立ちたがらない性格であるので、その名前は出て来ていない。ギルドの上層部しかその存在を知らない。

 

 世界中のギルド上層部が隠している最強冒険者、それは高校生の『狩宮雷陽(かりみや らいよう)』だ。今世界は彼によって守られている。


 彼は学園生活を送りながら世界中に散らばっている様々なダンジョンを1人で攻略して、スタンピード(ダンジョンからモンスターが溢れる現象。ギルド上層部と狩宮雷陽しか知らない。)を抑える。ギルドと連携して世界を救っていた。


 しかしギルドはそんな彼を失った。


 事の経緯を説明しよう。


 彼がこの世界から去った日から約半年前、彼は冒険者辞めたいと言っていた。その理由が「変に目立って家族に苦労させたく無い」との事。そして「普通に暮らしたい」と言った。

 

 彼の家族には一応彼の仕事を伝えているが、家族も彼を心配している。それと同時に彼も家族の事を心配しているのだ。彼は家族第一なのだ。


 しかし彼が辞めて仕舞えば残るのは100階あるダンジョンを3階までしか進めない有象無象な冒険者もどきなのでスタンピードであっという間に世界が滅亡してしまう。(世界中のギルド上層部が全員集まって攻略に踏み出しても90階が限界。)


 「それなら先に公表していれば良かったのでは」と思うかも知れないがそうは行かない。

 

 公表すればアンチが出てくる。最悪なケースは彼のアンチが彼の家族などを特定して危害を加える。そうなれば直ぐにこの世界は彼に見捨てられてしまう。だから公表しなかった。


 1日中必死に引き留めるギルドに彼は契約書を渡して来た。


 要約すると「自分の存在が世間にバレない限りは続ける。しかし何らかの形で自分の存在が世間にバレたら冒険者を辞めて家族と一緒にこの世界から去る。」との事。


 ギルドはサインするしか無かった。しかしギルドも彼を失いたく無いので対策をした。


 まず第一に彼が入る予定のダンジョンを1週間前から封鎖することにした。そして誰も入れない様にと各ギルドの上層部が部下によく言い聞かせた。

 

 次に彼の事を漏らさない様に情報の管理をより一層気をつけた。いつ何処でバレるかわからないのだ。これは世界の為である。彼が居なくなれば世界が滅んでしまう。


 しかし、たった半年で世間にバレた。なんと封鎖した筈のダンジョンに配信者が入り込んでいた。そして彼が戦っている場面を世界中に晒した。


 世界中のギルドは怒り狂った。まず彼が晒されたダンジョンを管理しているギルドの下っ端の人間を全員聞き込みした。誰かがあの配信者を入れたのだ。それを白状して貰う。そして1人の男が配信者をダンジョンへと入れたことが判明。もうどうにもならないが鬱憤を晴らすために拷問した。

 

 そして彼を晒した配信者を捕まえた。世間では『現代の小野小町』とか言う二つ名で呼ばれている有名美人配信者らしいがその顔面を何度も殴りボロボロにした。


 どうやって入ったか?なぜその日に入ったのか?封鎖の事は知らなかったのか?そう言う事を聞き出した。


 まずリスナーに隠していたギルド職員の彼氏にダンジョンを開けてもらったとの事。

 次にその日入った理由は本来その日にこのダンジョンでライブ放送をすると予告していたからだ。

 そして封鎖の事は知っていたが彼氏に開けて貰えるので気にしていなかったとの事だ。


 その1時間後には拷問でボロボロになった『現代の小野小町』と言う二つ名の配信者とその彼氏であるギルド職員が十字架に磔にされて世界中に晒された。


 そしてギルドは世界に最強冒険者の話、最強冒険者との契約の内容、そして磔にされている者達のせいで世界が滅ぶ事、を説明した。


 その結果突然の世界が滅ぶと言う情報に、何も知らなかった人々は混乱に陥った。そして30分後、ダンジョンからモンスターが本当に出て来た。

 

 それを知ったとある二つ名を持つ自称最強冒険者が意気揚々と最弱モンスターとされる1匹のゴブリンに切り掛かるも返り討ちにされ肉塊になった。それがライブで世界中に放送されていた。

 

 それを見ていた弱い冒険者や一般人達がダンジョンから離れる様に逃げる。家に引きこもる。しかしダンジョンから出て来たモンスターは建物ごと破壊して次々と人間を捕まえて殺す。


 これだけでは終わらない、スタンピードの影響なのか人間以外の生物がモンスター化した。飼っている犬猫、動物園の動物、更には一部の植物もモンスター化した。

 

 モンスターに抵抗しようとした自衛隊などの軍はワイバーンやドラゴンなどの激強モンスターによって即壊滅。軍を失った一般人は逃げるしか無かった。

 

 しかし山に逃げたものはトレントなど植物モンスターやモンスター化した動物に殺される。

 海に逃げればクラーケンなどの海のモンスターやモンスター化した魚に殺される。

 空はドラゴンやワイバーンやモンスター化した鳥がわんさか居る。その時飛んでいた飛行機は全て襲撃されて爆発した。

 

 何処にも逃げず家に籠ったものは外からモンスターに家ごと破壊されるか、飼っていたペットがモンスターに変異した事でペットに殺されるかの二択しか無かった。

 

 この世界にもう逃げ場は無かった。最強冒険者の家に行くも家自体が消失している。彼も彼の家族もこの世界から居なくなっていた。


 そして最強冒険者を失った事で必死の抵抗も虚しく最後の砦になっていたギルド本部はモンスターに蹂躙され人間が皆死んだので世界は滅んだのだった。

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ギルドと契約していた最強冒険者、配信者に晒されたので契約通り冒険者を辞めて別世界に旅立つ。 笑顔の傘 @iti5uma1

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