気怠い午後 君と聞いた風鈴の音は 夏が過ぎても心に響いて

 何故か、今日も海斗が遊びに来ている。


 プラモ作ってたら友達に馬鹿にされたそうで、うちの家を避難所にして色々と持ち込んで作業している。


「あいつらウゼェ。俺のこと、オタクとか呼びやがって。あ、ダリさんこれ全部ヤスリかけてって」

「おけー!」


 ついでに、私が文句1つ言わずに何かと手伝ってあげるものだから、雑用係に重宝されているのだ。

 雑用だろうが下僕だろうが、何でも来いってもんだ。


 海斗と一緒に居られるのなら、何だって嬉しい。

 っていうか、この作業結構楽しい。


 ……リン チリン チリン


「ダリさん、俺がするよりヤスリかけるの上手いよな。プラモ作ったことあんの?」

「全然ないよ。そっか、海斗より上手いのか」


 褒められたのが嬉しくて、ニヤニヤするのを我慢するのが大変だ。

 プラモは作ったことないけど、ネイルやる時のファイルで削るの慣れてるからかな?

 

 チリン チリン


 うちに来たからといって、あんまり海斗とおしゃべりはしない。

 ほぼ、黙々とお互いが作業している。


 でも今はこの距離感が丁度いいと思っている。

 万が一、海斗も私の事が好きだったりして告られたとしても、それはそれで困るし。

 ひとつ間違えたら、私が犯罪者になってしまう!


 でも


 一緒に買い物行ったり

 2人きりでご飯食べに行ったり

 ツーショットで写真撮ったり


 そしてそして


 いちゃいちゃしたり


 色々と、夢想してしまう。

 急に海斗と距離が近くなった今、何かと期待するなという方が無理だよ、ほんと。


 やばい、いま私めっちゃニヤニヤしてるかも、海斗に見られたりしてないかな?

 ちらっと海斗の方に目をやると。


「あれ、海斗?」

 寝ちゃってる!?


 すやすやと寝息をたてて無防備に眠っている。

 うわっ、可愛い。

 堪らなく可愛い!


 どうしよう、これ。

 起こしてあげた方が、いいのかな?


 でも……

 ずっと、見ていたい。


 出来ることなら、すぐ隣で私も一緒に昼寝したい。

 でも無意識にぎゅ~って、ハグしそうでヤバいw


 チリン チリン チリン チリン


 風鈴の音だけが聴こえる、2人だけを切り取ったこの空間が。

 世界と隔てられて、ずっとこのままでいられればいいのに。


 








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