腕白でもいいとは言うけれど、過ぎた冒険には気を付けろとハイリハイリフレスタンドバイミー

 絵に描いたような薄気味悪い曇天の空、夏だと言うのに寒気を感じる。

 晴れた日には何とも思わない薄汚れた白い建物も、近寄るのにすら躊躇する不気味さを放っている。


「な、なあ。やっぱ止めようぜ、守宮」

「ヤバいよ、バレたら絶対怒られるって」

「なんだよ、今更怖じ気づくなよお前ら!」


 くそっ、やっぱりコイツらじゃあお話にならない。入る前からこんなにビビってたのでは先が思いやられる。


「ほら、さっさと入るぞ」

「なんか、おれ達だけじゃ、さ…せめて氷室がいてくれたらなぁ」

「守宮が氷室怒らすから」


 うっせえよ。

 だってアイツ、オレが遊びに行ってもプラモばっか弄ってて、プラモの話しかしないし。


「3人もいるんだから戦力は充分だ、行くぞ」

「……死体とか、あったら?」

「死体より、殺人鬼がいたらヤバいぞ」


「いいじゃん、その方がスリルがあって」

「おれ達誰もスマホ持ってないから、ヤバいって!」

「あーあ、氷室はスマホ持ってんのになぁ、今からでも呼ぼうよ!」


「え、氷室スマホ持ってんの?いいなぁ」

「確か、アイフォンだったと思うぜ」


「なぁなぁ。それより氷室あいつ、女子高生と付き合ってるって、本当?」

「なんか、クラスの女子が見たって。近所の女子高生の家に行くのを」


「氷室イケメンだからなぁ。相手の高校生、可愛いのかな」

「いいなぁ。すげぇな、氷室」


 こいつら、さっきから下らない話ばっかしやがって。

 氷室が女となんか付き合う訳ないだろ。オレにそんな話したことないし。


 もう、こいつら放っておいて1人で行く。

 噂の幽霊屋敷で肝試しをやるんだ。


「こら!こんな所で何してるんだ!」

「あ、ヤベ!」

「お巡りさんだ、逃げろ!」


 オレだけ捕まってしまった。




「すみません、大変ご迷惑お掛けしました」


 すぐに母親が迎えに来た。

 そして、物凄く怒られた。


「5年生にもなって、よその家に不法侵入なんてやめなさいよ!あの建物、古くて危ないし」

「……ごめんなさい」


「これに懲りたら2度とやらない事!分かったわね。じゃあ、さっさと帰って晩御飯食べなさい」

「今日の晩御飯は?」


「あんたの好物」

「やった、ハンバーグだ!!!」



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