野分去れど、戻りし灼熱の日々の繰り返される、どう足掻いても地獄

草矢そうやさん、これは…」

「テントです」


「キャンプなの?」

「そうですね、キャンプかも知れません」


「家の中で!?」


 決して、気が触れた訳ではない。

 雨漏りしているのだ。




「それよりも夜鷹よだかさん、こんな日にどうしたんです?いくらお隣とは言え、外出は危ないですよ」

「いや~うち、停電しちゃって。心細かったんで、来ちゃった」


「うちの電気は、この通り無事です。漏電ですかね?」

「多分ね。台風がどっかに行ってくれないと、直せないね」


「まあ、それまでうちでゆっくりして下さい。雨漏りしてますがw」

「有難いねぇ。これ、宿代がわりに」


「お、ビールに冷酒。まだ冷えてますね」

「折角いい感じに冷えてたから、持ってきちゃった。後、これも」


「夜鷹さん、もしかして冷蔵庫の中身全部持ってきたんですかw」

「そうそう。草矢さんの冷蔵庫に入んなかったら、捨てていいから」


「どうせなら、この食材を使えるだけ使って、キャンプ飯をつくりましょう!」

「いいねぇ。ぼくも手伝うよ」


 とは言え、流石に部屋のなかで火をこすわけにもいかないので、調理は台所で行った。


 肉類はフライパンで焼いてなんちゃってBBQにして(焼き野菜を添えて)、魚介類はアヒージョと無国籍な炊き込みご飯に使用して、漬物や珍味は紙皿に並べて。


 キャンプ飯と言うより、残り物総浚そうざらえご飯だ、これは。

 まあ、酒のアテになればいいや。


「だいぶ雨風が酷くなりましたね。今がピークですかね?」

「だと、いいけどねェ。でもまァ、こんな時に草矢さんと一緒で良かったよ。今日はアリガトね」


「いえいえ、こちらこそ。いいお肉をご馳走になって。ビールもこれ、生ジョッキのいいヤツですよね」

「いいのいいの。どちみち草矢さんと一緒に飲もうと思ってたから」


「…あ、ありがとうございます!」

「こちらこそ」




 普段より時間を掛けた夕食だったが、台風でうちの家も停電になるといけないので、素早く片付けを済ませ、さっと風呂に入って就寝することにした。


「夜鷹さん、こっちに布団敷いて寝て貰ったんで、よろしいですか?」

「折角だからさ。テントで同衾しましょうよ」


「同衾、ですかw」

「そう。同衾」


「もしかして怖いんですか、台風」

「いや、全然」


 あまり広くないテントの中で、いい歳の男2人……しかも、どちらも比較的長身なので、お世辞にも良い寝心地とは言えなかった。

 どうせなら寝室のちゃんとしたベッドで、と思いつつもこのシチュエーションも悪くないな、と。


 そして、エアコン直しておいて良かった!




「あっっっっつ、暑ッ!!!」


 当然次の日は台風一過で。

 エアコンのタイマーは切れて、起床時間は昼前で。


「台風が無事通り過ぎたのはいいですが……夏が戻って来ましたね……」

「漏電……修理……面倒くさっ」


 俺も

 雨漏りの修理、面倒くさっ!

 そして、暑いッ!!!!!


 


 

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