遠い夏に幻を見た

湯上がりの、浴衣涼やかにラムネ色

　まだ明るいうちからの入浴は、何とも言えない特別感がある。

　いや、この後のイベントが特別だからなのだろうけど。

　シャワーだけで済まそうかと思っていたけど、折角お母さんがお湯を張ってくれていたので、湯船にも浸かろう。ゆったりと、心の準備も兼ねて。

　お湯の中に入浴剤を落とすと、徐々にラムネ色に染まっていった。

　髪と体を洗ってから、湯船に浸かる。

　清涼効果のある入浴剤なので、ほんのり冷感があってメントールの香りも爽やか。

　何より色が涼しげで良い。

　この後は夏祭りに行く。

　何故か我が町内は、同じ集会所内の子供が集まって行くのが習慣となっている。

　まあ、幼馴染みの杏子（あんず）と李（すもも）の姉妹とは普段から遊んでいるから、どっちみち一緒に祭りに行くだろうし。

　それよりも。

　海斗（かいと）は来るかな？

　女子は幾つになっても付き合いいいんだけど、男子はある程度大きくなったら参加しなくなったりするからなぁ。

　湯上がりは火照った体をしっかり冷ましてから、着替える。

　クール入浴剤だからと油断して、つい長湯をしてしまった。

　着るのは勿論浴衣。淡くちょっぴりくすんだ青緑色の朝顔柄が、さっきのお風呂のお湯の色を彷彿させる。

　髪も可愛くアップにして、薄くお化粧もして、コロンも付けて。

　うん、百点満点！　

　遅れないように行かなきゃ。

　ああ。

　海斗に会えるといいな。