茹だる暑さ 負けぬようにと 素麺を食む

 暑い……酷く喉も渇いている……今何時だ?

 おいおい、まだ10時じゃないか。


 昨日は21時まで残業して、その後同僚と飲みに行って更にカラオケで2時間歌って、帰ってきて風呂入ってグダグダしてたら寝たのが4時過ぎてて……休みの日くらいは、8時間睡眠を取りたいのだが。


 目が覚めてしまっては仕方がない、起きるとするか。




 起きがけは軽くストレッチとヨガを行い、青汁入りのスムージーを飲む。

 煙草を吸いながら朝刊をゆっくりと読み、気になった記事はスクラップして専用の引出しに入れて置く。

 もう何年も整理してないけど。


 新聞を読み終わる頃、お腹が鳴った。

 作るのも買いに出るのも面倒くさいし、何よりも暑くて大儀だ。

 しかし腹は減る。

 

 こんな時こそ素麺の出番だ。

 たっぷりのお湯を沸かし、5把茹でておく。余れば晩に、煮麺にゅうめんにして食べればよい。


 刻んだ小葱と甘辛く炊いた椎茸は常備してあるので、錦糸卵を作ってカニカマを解して…後は稲荷寿司でもあれば完璧なんだがなぁ。

 そう口いやしい事を考えてたら、玄関の呼び鈴チャイムが鳴った。


草矢そうやさん、これ…作り過ぎちゃって…」

「おお!」

 

 なんと、お隣の夜鷹よだかさんがバラ寿司を持って来てくれたのだった。稲荷ではなかったが、寧ろこっちの方が嬉しい。




「丁度、俺も素麺を茹で過ぎた所だったんですよ。ああ、この茶色い煮豆の入ったお寿司、本当に美味しい」

「草矢さんの所のお素麵は、具沢山でいいねェ」


「麦茶遠慮せずに飲んで下さいね。あ、それともビールのほうがいいですか?」

「真っ昼間からは飲まないですよぅ。うそうそ、飲むけど(笑)今はいらないです」


「ところで、暑くないですか?すみませんね、この部屋クーラー壊れてて。今時扇風機だけとか」

「いえいえ。確かに暑いけどね、ハハッ、古き善きあの頃みたいで悪くないですよ。でも、気を付けないと熱中症になるよw」


「あ、西瓜如何ですか?少しは涼しくなりますよ」

「いいねェ西瓜。ぼく、西瓜大好き」




 食後暫くして、夜鷹さんは家に帰った。

 が、直ぐに我が家に戻って来た。


「草矢さん、これ宜しければどうぞ」


 そう言って渡してくれたのは、何処かから貰ったお中元のようだった。


「これは?」

「ちょっと被ってしまってねェ、お素麺。これ食べて夏バテ克服してね~、なんちゃって」 


「おー、ありがとうございます!これ食って夏バテに勝ちますね!」




 今度こそ、夜鷹さんは家に帰ったようだ。

 頂いた素麺の箱を、保存食置き場にしている棚…の上に置く。既に幾つもある箱の、更に上に。


 実は俺もあちこちから素麺の贈答品を貰っていたのであった。

 まぁ、夏はまだまだこれからだし。

 また夜鷹さんを呼んで一緒に食べて貰うのもいいし。


 今度は、稲荷寿司をリクエストしようかな~、中の酢飯は茶色い煮豆の入ってるヤツを。


 







 

 

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