現実(リアル)ではとても着られぬが、今の私はモニタの中のマーメイド
「こんにちは、
「あ……!」
しまった、はやく修理しておくべきだった。
エアコンを。
「チャイム押しても出てこないからさ、庭の方回ってみたら縁側開いてたから。取り込み中悪かったねぇ」
「いやいや、気付かなかった俺が悪かったですよ、
夜鷹さんが職場で沢山のお土産のお菓子を頂いたからと、わざわざ持ってきてくれた。
相変わらず暑い部屋なので、氷をたっぷり入れたアイスコーヒーをお礼に出して、一緒にもそもそと焼菓子を食べた。
「懐かしいねェ。ドラゴン倒すヤツ?」
「そう、ドラゴン倒すヤツ。よく分かりましたね、夜鷹さん。もしかして、やってる?」
「いや、もう30年くらいやってないよwBGM聞き覚えがあって。でも別のゲームみたいだねぇ」
「昔のシリーズの曲が所々使われてあるんですよ。確かに、色々と昔とは違いますね。やる事が多いw」
「へぇー、面白そうだねぇ。この、ちっちゃい可愛らしいのが、草矢さんかい?」
「そうです。こんな可愛い
「みんな?」
「あ、これオンラインゲームなんですよ。この青文字の名前、全部どこかの見知らぬプレイヤーさんです」
「へえーーー!草矢さん凄い事をやってるんだねぇ~!」
「いや全然。チャットで話しかけられても返事出来ないので、慌てて逃げますw」
「あんまり戦闘とかはしないの?あ、このクッキーいまいち美味しくないよ、食べない方がいいw」
「そうですか?さっき頂きましたが、普通に美味しかったですよ。あ、今からイベクエ……その、イベントクエストに行くので戦闘は暫く無しです、すみません」
「いいよいいよ。お、水着に着替えたの、可愛いの着せてるねェ」
「コイツ着せないと、イベントに参加出来ないんですよw」
夜鷹さんは意外と興味をもってくれたようで、この歳になってもゲームを嗜んでいるのがバレた気恥ずかしさも、どこかに飛んでいった。
いや、いい歳のオッサンが女子のキャラクターで着せ替えごっこをしているのは、恥ずべきかもだがw
しかも
水着を幾つも所有していて、あまつさえカラーリングの変更に頭を悩ませている事は、絶対に秘密だw
「夜鷹さんも、やってみますか?」
「ぼくはやめとくよ~、ゲームなんてずっとやってないから、下手くそだよ」
「俺も久しぶりにプレイした時は、そうでしたよ。あ、このチョコレートのやつ、凄く美味いですよ!」
「ほんとだ、これは美味い。今回一番の当たりだねぇ。草矢さん、少しやってもいい?」
どうぞ、とコントローラーを渡した。
最初はたどたどしくプレイしていた夜鷹さんであったが、すぐにコツを飲み込んで、あっという間に俺よりも上手くイベントのミニゲームをこなしていた。
「夜鷹さん、上手いじゃないですか!俺のスコア抜かれましたよ!」
「ごめんね、抜いちゃった。ああ、これ楽しい。ぼくも始めよっかな」
「取り合えずパソコン持ってたら、無料で体験版始められるので。俺、何でも教えますよ」
「それじゃあ、始めたらまた声掛けるね。ところで草矢さん、やっぱりこの部屋暑いよw熱中症になっちゃうよ」
ほとんど氷が溶けて恐ろしく薄くなってしまったアイスコーヒーを飲みながら、次の休みこそはエアコンの修理を業者に頼もうと思った。
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