第11話

ドアの呼び鈴が鳴る。すると、俺が最後聞いた時からほとんど変わらない声で父が出て来た。

「おぅ、お帰り...。久しぶりだな。」柔和な笑みを浮かべた父は、数年前に比べ白髪も前に比べ多くなり、前は時々しか掛けて居なかったメガネをするようになっていた。「あぁ、ただいま父さん...。久しぶり」と言うと「外はまだ暑いだろ。ほら、中に入った入った!」ニッと笑い俺と幸の背を押し家の中に入れていく。

「伯父様、お久しぶりです。」と何処か力の抜けた幸が溢す笑みから。『家に入れる時に少し強引になる癖まだ残ってるんだな』と心の裡に溢した。


「お、幸ちゃん!ま〜た美人さんになって...オジサン嬉しいよ。そうだ!いっその事、ウチの馬鹿の代わりにウチに来ない?」と父が戯けていると後ろから「アナタ?何を言ってるのかしら?」と黒い笑みを浮かべる母が父の肩を握りしめた。「痛っ!痛い痛い、痛いって!ちょっと待って母さん!?ちょっとした冗句でしょう!ちょっと二人とも、笑ってないで助けてくれって!」と下らない冗句も言う気力も無い状態にさせられていた。

「アナタ少し黙ってなさい?寡黙な男ってカッコいいものよ?」と黒い笑みを父に向けると、血色が悪くなった父が首が取れてしまうのではないかと思われるほどの速さで上下に振り、バタバタと家の中に下がって食事の準備に取り掛かる。


 恐怖政治の一端を垣間見得た気がしたが、あえて触れず「ただいま母さん。ちょっと父さんの手伝いしてくるわ」と独り夕飯の準備をする父に手を貸しに行った。


そんな俺を見送った母は「あらら、嫌われちゃったかしら?」と小首を傾げたが...。「いえ、有無を言わせず伯父様を従わせた姿が些か刺激が強かったのでは...?」と幸は恐る恐る言うと、「そっか...」と少し落ち込んだ様子で肩を落としていた。「ですが、そんな伯母様だから私は拾っていただいて嬉しかったんですよ?」と笑顔を向けると、頬を赤く染められてしまっていた。


家の居間の方向から伯父様達の「ご飯だよ〜!」との声がしたので、フリーズしている伯母様に「冷めちゃったら勿体無いので、行きましょう?」と言い家の中へ歩みを進めた。

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