第10話
前もって実家に帰る旨の連絡を入れていたため、カフェを出て暫くは夜の帷の降り所々に街灯の灯る道を幸と二人並んでゆっくりと歩く。
その道中「いや〜...それにしても兄さんとお姉ちゃんが、あのカフェで働いていたっていう噂の先輩だったなんて驚きだったんだけど...?」とジトっとした視線が飛んでくる。
幸としては自分に何の相談もなく唯と二人だけだったのが、やはり疎外感を感じさせてしまったのだろうか...。と思った所「当時の私はね、もっと兄さんたちと一緒に居たかったんだよ?」と先回りされてしまった。
ビックリして顔を見ると「何を不思議そうな顔してるの?顔に書いてあるってば。それとも、私相手に隠せると思ってるの?」幸は口角の上げた悪戯を成功させた時の唯の面影を感じさせる笑みを浮かべた。
「それにね、友達だって出来たけど...。声をかけて来た男の子なんて、みんな何処か子供っぽくて...落ち着きないし、私と仲良くなりたいって言っておいて、自分の好きな事をただ押し付けるだけだったんだから...。兄さんと話してる時と違って、つまんないったらありゃしないよ」と何処か呆れた様子で当時のことを振り返った。
「小さい頃から、兄さんは私と一緒色んなことを話したりしたよね。家族から鼻つまみ者にされて寂しい思いをしてた私をお姉ちゃんと一緒に外に遊びに行って、広い公園で膝の上に抱えて、文字が読めないからって沢山の本を読みきかせてくれたよね。そうやって私に、外の世界を教えてくれた。それからも一人でも読みやすい本を教えてくれたり...。家の中に居場所のなかった私には、兄さんの膝の上が一番安心できる所だったんだよ?膝の上からずっと兄さんの顔を近くで見てたから、どんなことを思ってるか、些細な表情の変化で判るようになっちゃったんだから。」と満面の笑みを浮かべた。
俺は満面の笑みを浮かべそんなことを幸に言われてしまい面映くなり、顔を背けてしまった。顔が少し熱く感じるが、これは残暑のせいだと...自分を無理矢理にでも納得させる。
「兄さん...?顔っていうか、耳まで真っ赤ですよ!?頬もこんなに熱く...急いで行こう!」と手を引き、数年ぶりになる実家に手を引かれて幸と一緒に走っていった。
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