第4話

幸(さち)目線


お姉ちゃんには内緒で「主人公と二人きりの時は幸(さち)と読んでもらうと言う約束をしてた。」家族からの期待も、特に将来に対する展望もなかった私にとって一番大事で、地獄ともとれた幼少期に残された初恋の約束...だったから。

例え私に比べてどれだけ大切にされて、愛されてても、お兄さんだけはこの約束がある限り私だけの「お兄さん」だったから...。


だから、中途採用の時期にお兄さんの会社に来た時には、お兄さん...私との約束を果たしてくれなかった。最初は私のことなんて忘れちゃったのかなって、真面目に考えたりした。でも、お兄さんと話を続けるたびに、言葉を重ねるたび、最初に「ゆい」と言おうとしたんだって...。お姉ちゃんを重ねてるんだって。

 あんな最期、二人とも受け入れられてないってわかってたから。だから、お姉ちゃんから託された、あのビデオメッセージをお兄さんに見せた。最期に見たお姉ちゃんの弱った姿はどこか儚すぎて、壊れてしまいそうで。気がついたら私もお兄さんも涙でボロボロになって...。


メッセージを見終わったあとにお兄さんが私を幸(さち)って呼んでくれた...。それがたまらなく嬉しかった。そして、わたしの初恋もまだ終わってなかったことがわかった瞬間だった...。

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