こゆきとのぞみの、

のぞみちゃんと一緒やないと

「うう~ん……」

「ほら小雪、お会計済ませたから帰るわよ、後で返しなさいよね」


 グラスや空き皿の横でテーブルに突っ伏している白い頭に声をかける。さっきまで笑い上戸でワインをパカパカ呑んでしゃべりまくっていたこの女は、急に電池が切れたようにダウンしてしまった。飲み会で小雪目当ての男性が彼女を酔い潰そうとどんどん呑ませても逆に潰されることが常なのに、珍しいこともあるものだ。

 夏でも冬でも小雪が着込んでいる黒いパーカーの肩を揺するも、ぐったりした彼女は呻くばかり。


「ほら立ちなさいよ。……立てる?」

「うう~ん、立たれへ~ん……のぞみちゃん、抱っこしてぇ」


 わざとらしく甘えるよう口調の関西弁。


「そーいう冗談言う余裕があるなら大丈夫ね、置いてくわよ」


 呆れて肩から手を離して身を起こすと、小雪の伸ばしてきた手がわたしのスカートを掴む。


「いやや~、のぞみちゃんと一緒やないと帰らへん-」

「子どもかアンタは!

あーもう、珍しくベロベロになったかと思えばめんどくさいわね……」






 

 

 


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