ウチ人間とちゃうよ

 二人だけのプチ打ち上げと称して、いつもの居酒屋で乾杯することにした。酷使した喉にビールがしみる……気がする。

 わたしが一杯目を空にしないうちに小雪はウィスキーだのワインだの日本酒だのとむちゃくちゃなちゃんぽんを始めた。これでこいつが酔いつぶれたところは今まで見たことがない。こいつの肝機能はどうなってるのか。どれだけつきあっても常識離れしたところだらけで呆れてしまう。

 まったく、本当に人間なのかどうか……。


「なあなあのぞみちゃん、ウチ、人間とちゃうよ、って言ったらどないする~?」


「え……?」


 冗談交じりに頭に浮かべたことを口にされて、間抜けな声が出た。顔を上げると、白い頬をやや染めた小雪がにやにやしてこちらの目をのぞき込んで来た。

 なんでそんなことを、と思って、今回の依頼を思い返す。主人公がヒロインに正体を打ち明けるシーン。

 それにかこつけてわたしをからかっているのだろう、と彼女の瞳に写る自分のしかめ面を見返す。

 口を開き、思い直して、ちょうど届いたオレンジジュースを一口。わたしはノンアルコールを挟みながら慎重に呑むのがポリシーだ。


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